経済 2018/05/21

危機に備えるべき日本





 南シナ海が中国の領海になれば、原油を輸入に頼っている日本としても大打撃になります。国家の命運に関わる問題として、日本はアメリカと共に戦うべきです。海上自衛隊のP3C対潜哨戒機の航続距離であれば、沖縄から発進して南シナ海での哨戒任務に従事することも可能です。日本はそうした形での協力を始めていくべきです。


 現在、南シナ海には中国海軍の戦略原子力潜水艦が展開しており、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)でアメリカを攻撃できる態勢にあります。つまり、米ソ冷戦時代と同様、米中両国の間には相互確証破壊が成立しつつあります。これは日本に対するアメリカの「核の傘」が存在しなくなることを意味します。


 現在、南シナ海は公海であり、米軍は中国海軍の原潜の存在をすべて把握しています。そして、SLBMが発射される前に撃破することができます。そのためにも南シナ海を中国の領海にすることなく、今後も公海として維持する必要があります。それは日本の安全保障のために絶対必要です。


 米中対立がエア・シー・バトルかオフショー・コントロールかのどちらになるにせよ、日本は日米同盟を基盤にして戦い抜かなければなりません。現状はアメリカの優位にあり、経済制裁となった場合、食糧輸入までアメリカに依存している中国は切るべきカードがありません。


 米中対立の現実的な流れとしては、まず中国に対する経済制裁によって南シナ海の覇権をギブアップさせることができるか、という点が重要です。その次にオフショー・コントロールからエア・シー・バトルというエスカレーションが続くでしょう。日本もこうしたシナリオを想定したうえで、日米同盟に即した準備を今からしていくべきです。


 私は中国の崩壊は経済破綻だけではもたらされないと思います。こうしたエア・シー・バトルに敗れることで体制の権威が失墜するなど、複合的な危機によってもたらされると思っています。



2017年9月1日発行藤井厳喜・宮崎正弘著『韓国は日米に見捨てられ、北朝鮮と中国はジリ貧』第5章 これから何が起こるのか(政治・軍事・経済)ーP187





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