経済 2018/01/08

アメリカは対外的な関与を縮小していく




当面の間、アメリカが朝鮮半島で軍事行動を起こさないと私が確信している理由は、アメリカが地球上で二箇所同時の軍事作戦を展開できないためです。財政的にもその余裕はありません。


大統領としてのトランプの使命はアメリカ経済の建て直しです。そして、軍事的な課題は第一に中東地域でISを壊滅させることであり、東アジアでの行動は中東地域が片付いてからになります。現在はロシアや中国も台頭するなど、不安定な多極化の時代にあり、冷戦時代とは異なります。


第二次世界大戦後のアメリカ政治を作ったのは共和党・民主党のエスタブリッシュメントであり、NATOや日米安保体制、米韓軍事同盟はアメリカが一番強い時代に作ったものです。


しかし、アメリカ経済の相対的低下の現状を考えれば、それらを見直さざるを得ないのは当然です。「気に入らない国があるから軍事力で打倒し、ネイション・ビルディング(国家再建)をもう一回やるという馬鹿なことはもうしない」とトランプは言っています。


私はこのトランプの考えは正しいと思います。かつての湾岸戦争の際、アメリカ国民は湾岸への派兵によって原油を安く入手できると思っていましたが、実際は原油高に見舞われました。


アメリカは自国にとって損になるような戦争はもうしません。かつてのベトナム戦争で米軍は5万人以上の戦死者を出しました。今のアメリカが耐えられる犠牲者数は3000人〜5000人までが限界であり、一回の戦役で5万人以上の死者を出すことを許さないはずです。


そうなると、アメリカとしては対外的な関与を見直し、縮小せざるを得ないわけです。太平洋地域でアメリカに敵対する力を持ち始めたのが中国であり、こうした多極化時代の到来は私が冷戦終結直後から予測していたものです。




2017年9月1日発行
藤井厳喜・宮崎正弘著『韓国は日米に見捨てられ、北朝鮮と中国はジリ貧
第1章 北朝鮮はどこまで暴走するかーP82




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