移民・難民問題とどう向き合うのか
フランスの新大統領となったマクロンの下でもフランスが難民問題を解決することは不可能です。経済だけでなく、テロ対策の上でも深刻な問題として横たわります。ルペンを移民排斥主義者と規定する向きがありますが、これは正しくありません。彼女は年間1万人の移民を受け入れるけれども、無制限な移民受け入れには反対すると表明しているのです。
また、「ドイツのための選択肢」も反移民政党ではない。もともと彼らはユーロに反対し、マルクの復活を主張するエコノミスト色の強い政党でした。しかし、多くの難民がドイツに流入して社会問題になる中、理性的な対応策を主張したところ、大衆ヒステリー的な批判に晒され、極右政党というレッテルを貼られてしまったわけです。
現在、ドイツでは軍、教会、行政組織など、本来は保守的であった場所にまで移民が入り込み、拒絶できなくなっている。ドイツ人は「ドイツ語を話し、ドイツの文化を愛し、ドイツ人らしく生きる」という当たり前のことが言えなくなってきている。そんなことを言えば、途端に排外主義者扱いになってしまうわけです。
かつて作家の三島由紀夫は1970(昭和45)年7月7日、『サンケイ新聞』(当時)夕刊で日本の行く末について、「からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済的大国が極東に残るのであろう」と述べました。この三島の表現を借りると、EUは単なるニュートラルな経済共同体になり、欧州としてのアイデンティティはなくなってしまうでしょう。そして最も「からっぽな経済大国」になろうとしているのがドイツです。
むしろ移民問題にしっかりと対応しているのはポーランドやハンガリーなど東欧諸国です。こうした国々は冷戦時代にソ連の抑圧を受け、国内の民主化運動を蹂躙された経験があるからこそ、国家の独立や民主政治について明確な意識を持っています。
難民問題について、最もはっきりとした主張を述べているのはハンガリーのオルバン首相です。彼は、自国の受け入れ対象はキリスト教徒の難民のみであると述べており、これは至極当然の主張と言えます。
シリア難民問題はあくまでもシリア人の責任であり、無条件に外国から難民を受け入れれば国家は滅びます。普遍的人道主義に囚われて難民問題を論じるべきではありません。
2017年9月1日発行藤井厳喜・宮崎正弘著『韓国は日米に見捨てられ、北朝鮮と中国はジリ貧』第4章 世界の大変貌 中国、EU、ロシア、そして極東ーP156