経済 2018/05/16

日本は米中対立を煽ることが理想の国策





私は「トュキディデスの罠」を米中関係に当てはめるのは正しくないと思います。


ピーター・ナバロの著書(赤根洋子訳)『米中もし戦わば』(文藝春秋、2016年)の中の、「トュキディデスの罠」についての分析はあいまいです。


本来、アテネにはスパルタに取って代わろうとする底意はなかったが、双方の疑心暗鬼によってペロポネソス戦争(前431~前404年)に発展しました。それを歴史家であるトュキディデスは「罠」と呼んだわけです。


しかし、現在の中国は本気でアメリカに取って代わろうとしています。


その自分たちの意図を隠すために、「トュキディデスの罠」を持ち出していると見るべきです。「トュキディデスの罠」を語ることは中国の詐術に陥ることを意味します。


私は今後の国際情勢は中国にとって厳しいものになり、結果として習近平が中国共産党の最後の指導者になるのではないかと観測しています。


戦後、日本は製造業や金融の分野で対米摩擦を生み、経済面でアメリカに潰されるという経験をしました。ソ連は軍事面でのアメリカのライバルでしたが、潰されました。


今、そのアメリカの覇権を軍事面でも経済面でも脅かしているのが中国であり、アメリカは必ず中国を潰しにかかるはずです。


日本が国策としてやるべきことは米中対立を煽り、両国を引き離すことです。ロシアがアメリカや日本の対中政策を積極的に支援することはないでしょうが、少なくとも米中対立において中立的な立場でいてもらう必要はあります。中国が潰れることはロシアにとっても国益になります。


トランプはテロ集団としてIS、国家として中国を最大の脅威として認識しています。中国を軍事的に強大化したのはこれまでのアメリカの政策の誤りが原因であり、トランプ自身もそれを理解しています。


米中両国が経済的に相互依存状態にあることを解消しなければ、今後、アメリカとして思い切った政策をとることはできないというのがトランプやナバロの考えです。


目下、米中関係は小康状態にありますが、米中対立が再燃すれば、トランプ政権におけるナバロの位置付けも再浮上するでしょう。野球でたとえると、今のナバロはベンチにいる状態ですが、再び側近としてマウンドに立つ可能性は十分にあります。


2017年9月1日発行藤井厳喜・宮崎正弘著『韓国は日米に見捨てられ、北朝鮮と中国はジリ貧』第5章 これから何が起こるのか(政治・軍事・経済)ーP176





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