習慣 2017/07/10

思いやりと勇気のバランス


あるとき、私の上司が私にこう言いました。
ロイス、言葉に気を付けなさい。言葉には意味があるんですよ。
私はそう言われたときから、それについて何回も考えてきました。

もちろん言葉には意味がありますよね。でも上司はそういう意味で言ったんではないと思ったんです。彼が言いたかったのは、正しい感情を感じ、正しい行動をするためには、正しい言葉を使いなさい。感情を伝えるためには正しい言葉を使いなさい…ということだったと思うんです。

言葉は本当に重要です。私はいろいろな国に行ってたくさんのセミナーをしたり、通訳付きでセミナーをしたりしました。

もちろんすぐには訳せない単語も出てくるので、それについて通訳と話し合ったりもします。
完全にマッチする言葉もあれば、まったくマッチしない言葉もあるんです。

例えば何年も前に日本に行ったときの話です。「エンパワーメント」という言葉について通訳の人がそのコンセプトに合う言葉を47個も提案してきたんです。結局「エンパワーメント」という英語の言葉をそのまま使うようにしました。

言葉によく耳を傾けてください。思考に耳を傾けてください。言いたいこと、したいことを的確に伝える言葉を選んでください。そして謙虚さを持って選んでください。

さて、私は「勇気」と「思いやり」という、この2つの言葉のバランスを取るのが非常に大事だと思っています。

「思いやり」というのは謙虚さであり、相手の話を聞くことであり、反応するのではなく主体性を持ち、きちんと時間を取って自分の言葉を選び、自分の反応を選ぶ、ということだと思います。

思いやりと勇気のバランスを取るというのは、難しい問題に対しても相手に勇気と思いやりを持ちながら話す、ということを示しています。

この「思いやり」という概念は、ただ単に生まれ持っているものとも違います。もし今あなたが、自分に思いやりが欠けているな…と感じたとしたらあなたにとって非常に便利な力強いツールになるまで練習してください。

あなたは真摯でなければいけません。思いやりは、人をコントロールするものではないからです。思いやり、というのは…例えば道を歩いていて何人かの人が自分に向かって歩いてきたら、あなたはちょっと横にどいてあげる、など。

そういうものは思いやりの1つですよね。私の母が教えてくれた1つの思いやりは、デートでは扉を開けて女性を先に通してあげる、というようなことです。

こういう思いやりによって私たちがより強くなり、影響を広げることができるようになるんです。
あなたの肩書や地位だけではなくて、あなた自身がどういう人間かであるか、によって他人に影響を与え、モチベーションを上げることができるんです。もちろんあなたが相手に影響を与えるのですが、相手に自発的に行動を起こさせることができる力になるのです。

思いやりというのは、相手の話を聞くことに繋がります。思いやりの力は、人々がお互いに話をする文化を築くためには必要不可欠です。人々が本当の意味でコミュニケーションができる、ストレートに言いたいことを言い合える文化。なぜなら、ちょっとイラっとしたときにも両方の人がお互いに思いやりを持っていれば許すことができますよね。思いやりというのは、私にとっては「許し」とも大きく結び付いています。

思いやりにはいろいろな種類がありますし、その実践方法もさまざまです。
例えば、誰かを認めて金銭的な報酬を支払うことも1つですし、誰かを信頼し、その信頼を拡げていくことも思いやりの1つです。思いやりを持つことで、良い判断をすることもできますよね。
もしくは、今は信頼のない状況だったとしても、思いやりを持って信頼を高めていくことはできるはずなんです。

何年もの間、私はいろいろな経営者の方たちのメンターになる機会がありました。
あるときシンガポールで、とある経営者のコーチングをしたことがあります。
彼は経営者になって1年ぐらいたったところでした。
私は彼のところに行って、状況を手助けすることになりました。

彼はそれまで、周りの人に耳を傾けるという形で思いやりを見せていませんでした。
皆が必要としているサポートに対して、分かる形で思いやりを示すことができていませんでした。
私は彼に言いました。
あなたは社員の方たちと一緒にいるときにどのように行動していますか?どのような態度を示していますか?どんなことをしていますか?

すると、彼はこう言いました。

「じゃあロイス、ミーティングがもうすぐあるから、一緒に来て見てくれないか?」

それで、私はミーティングに行って彼を観察することにしました。

ミーティングでは、誰かが何かを発言をして、彼がそれに合意しなかった場合、彼はすぐに合意しない旨を示していました。逆に、合意しているときは何も言わなかったんです。

それで私は気付きました。
周りの人は、ちょっと彼に対して意見するのを怖がるようになってしまっていたんですね。

ミーティングのあと、私は彼にこう言いました。

私「あなたは皆さんを非常に尊重していますよね」

彼「もちろん、していますよ。
  みんなちゃんと仕事をしてくれるし…」

私「あなたが相手に対して、  尊重や思いやりを見せられる最良の方法はなんだと思いますか?  社員を、あなたの会社の貢献者となってくれるようにするには、どうしたらいいと思いますか?」

彼「そうですね、給料をきちんと払うこと。それからきちんとパーティーもすること。」

彼は、自分では思いやりを示していると思っていたんですね。
もちろん見せてはいたんです。でも私はこう言いました。

私「ちなみに、会議の仕方について考えたことはありますか?例えばこのようなことはいかがでしょうか。何か議題があるときに、それをディスカッションする時には、最初の人が何か提案をし、みんながちゃんとその人の話を聞く。そして、その人が理解されたと感じてから次の人が話すようにする。そしてみんなが話していく。そうすることで、1人1人が重要な議題に対して発言することができる。」

彼「いや、、、でも、もう解決策は分かっているわけだから…」

私「でもとにかく試してみましょうよ。どういうふうになるかだけ、試してみるだけでもいいじゃないですか!」

私はコーチとして、そのような課題を彼に出し、2~3カ月後に戻ってきました。

私「どうですか?」

彼「いや、素晴らしいんですよ!毎回、会議でみんなが発言してくれるようになりました。その時、みんなが理解されているように感じるようにしたら、コミュニケーション能力が飛躍的に高まったんです。」

私「その基盤はなんですか?」

彼「私が思いやりを持って口を必要以上に開かないようにしたんです。そしてみんなが会話できるようにしたことが基盤です。」

もちろんこれは本当に素晴らしい例だったので、私もこのことを今でもよく覚えているんです。

ですので、思いやりと勇気のバランスを取ってください。
ほかの人を理解するようにしてください。相手を人間として認めるようにしてください。そしてきちんと時間を取って、それを考えるようにしてください。

ハワイのある小さな大学に行った時、そこには2300人の大学生がいました。最初にキャンパスに行ったとき、私は側道を歩いていました。すると、そこの大学の学長が歩いてきました。すると学長は、すれ違う2、3人の大学生を名前で呼んだんです。次にすれ違う2、3人の学生も名前で呼びました。見ていると、40~50人、次から次へと学生を名前で呼んでいました。

どうしたら、そんなことができるんですか?と私は聞きました。
すると学長は、自分のデスクから生徒全員の名簿みたいなものを出して、こう言いました。

毎日、私は5人、10人、15人暗記して、キャンパスに出て行って練習するんです。彼らを見つけて実際に呼んでみて、練習するんですよ。そうすればすぐに、2300人の名前と顔を一致させることができた…と。本当に素晴らしいですよね。

どうしたら、あなたもそういうことができるでしょうか。これは、学長なりの「生徒に思いやりを示す」という方法だったんです。この人は、本当に素晴らしい人間でした。

今日も聞いてくださってありがとうございました。
今週の成功のための言葉は「思いやり」でした。

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