習慣 2017/07/12

ラットレース、本当の問題

新たなテクノロジーにより、私達の生活はラクになり
もっと自由な時間が増えるはずだった。

しかし、今日の現実はその反対ではないだろうか。
FAX、Eメール、携帯電話、スマホを
誰もが持つようになったことで
私達の生活はかつてないほどに忙しくなった。

自由な時間が減ったばかりか
仕事の要求から逃れることが難しくなった。
どこにいても、つかまってしまう。
飛行機からも電話がかけられるほどだ。

この新しいテクノロジーに加えて
組織が急速に変化していることを考えると、
問題はさらに悪化する。
私達は死ぬまで働く状況になってしまう。

ストレスの度合いも
かつてないほど高くなっている。
ノーマン・ヴィンセント・ピールと私が
“The Power of Ethical Management”
(邦題:「企業倫理の力」)を書いた時、
「人間は、2人の自分を持っている」という考えに至った。


タスクベースで動く外向きの自分と、
内省的な内向きの自分だ。

朝目覚ましが鳴ると、
ほとんどの人は飛び起きて
タスクベースで動く外向きの自分になる。
報告書を読みながら着替え、
朝の会議に間に合うようにと
運転しながら電話をかけている。

午前中をずっと忙しく過ごし、
ランチミーティングに駆け込む。
そして午後中ずっと忙しくする。
夕食も会議だ。

ついに家に帰っても
隣にいる人に「おやすみ」を言う力も残っておらず、
ベッドに倒れ込む。
そして翌日も同じサイクルの繰り返しだ。

そのような毎日が続き、
内省的な内向きの自分と呼び覚ます時間もない。
内省的な自分と向き合うほうが、時間もかかるし
より意識的にやらなければいけないプロセスだからだ。

このような行動を、休暇中でさえ繰り返す。
ベッドから起きてゴルフコースに出て
テニスをして、泳ぐ。
次から次へと活動する。
休暇から戻った頃には疲れ切っていて
帰宅したら疲れをとる以外のことが出来なくなる。

私の妻のマージーは
「複雑な生活のバランスをとる戦略」
というセミナーを開催しており、
とても良い評判を頂いている。

参加者に自分の生活を振り返り、
正しい方向に進んでいるかを考えてもらうのだ。

セミナーの狙いは「成功」と「充足」の
バランスを取る手助けをすることだ。
「充足」とは、人生と仕事を繋げることであり、
精神性と繋がることであり、
仕事に使う時間と、家族や友人と過ごす時間との
バランスを取ることである。


ハロルド・クシュナーの話を聞いたことがある。
彼は、ラビ(ユダヤ教の教師)でもあり、
“When Bad Things Happen to Good People”
(邦題「なぜ私だけが苦しむのか」)の著者でもある。
彼いわく、人生には2つの幕がある、と。


第1幕は「達成」。
第2幕は「繋がり」。


「達成」は、自然な行為だ。
おそらく人間だけが、生存すること以外に対して
目標を設定して達成していくことのできる種だ。
今日の世界で私達は、達成こそが全てであるかのように
行動してしまっており、
多くの人は「繋がる」ところまで到達しない。

それこそが充足をもたらしてくれるのに。
中には、売買こそが人生の全てだと
信じている人もいる。

しかし、死の床にあって全員が思うのは、
もっと愛せばよかった、
もっと家族や友人と時間を過ごせばよかった、
ということだ。

私は人々がミッション・ステートメントや
価値観、人生の目標を持つ手助けをしている。
また、人生のバランスをとる手助けもしている。
ただ緊急なことと、本当に重要なことを見分け、
重要なことにフォーカスする後押しもしている。
例えば、人間関係、健康、精神性など、
人生の質そのものを高めるような項目だ。

あなたは毎日忙しくしすぎていないだろうか?
人生をどのように振り返っているだろうか?
私はいつも、リリー・トムリンの言葉を思い出す。
「ラットレースにいることの問題は、
 勝っても所詮ラットだ、ということだ」

ケン・ブランチャード
「1分間マネージャー」シリーズの著者

関連記事