マネジメント 2016/12/05

何も言わない事の危険性とその克服法



ロイス:
こんにちは。
ロイス・クルーガーです。
GrowthUのインタビュー・シリーズへようこそ。
このシリーズでは、世界の組織の成長に貢献する思想的リーダーや
エグゼクティブの方々とのインタビューをお届けします。

本日はジョン・ストーカーをご紹介します。
ジョン、こんにちは。

ジョン:
こんにちは、ロイス。
お元気ですか。

ロイス:
おかげさまで、元気です。
今日いらしてくださってありがとうございます。
ジョンは人々の思考やコミュニケーション能力を上げるための
トレーナーとして世界中で活躍しています。
コミュニケーションのエキスパートとして世界的に認められているジョンは、
人とうまくコミュニケーションが取れるようになれば
驚くべき結果を出すことができると信じています。

彼はダイアログ・ワークスの社長で
『オーバーカミング・フェイク・トーク』の著者です。
素晴らしい題名ですね。
ジョンは組織行動学の修士号と法務博士号を持っています。
ジョンは刑事事件弁護士としての経歴を持っている他
グランドキャニオンで、急流川下りのガイドとして
働いたこともあります。
また、13年間大学で講師をしていました。

ジョンと妻のステファニーは1994年に結婚。
5人の子供たちに恵まれています。
ジョン、今日はお時間をどうもありがとうございます。

ジョン:
どうもありがとうございます。

ロイス:
それでは早速始めましょう。
まず、あなたがどのようにこの仕事についたかをお聞きします。
中小企業から大企業まで、
様々な企業のコミュニケーション・コンサルタント・トレーナーとして
活躍するということはどんなことですか。

ジョン:
私たちの日常で、コミュニケーションを使わない場面はありません。
昨年、ある企業の重役が私にこう言いました。

「会話の仕方なんかわざわざ学ばなくてもいいのでは?」

そこで私はこう言いました。

「自分自身を、これらの物へつながる門だと思ってください」

そして私はホワイトボードに門を書いた後、

「生産性」
「利益性」
「アカウンタビリティ」
「ビジョン」
「モチベーション」
「協業」
「協力」
「事業への関心」

などなどと、長いリストを書きました。

彼は「わかったわかった」と納得したようでしたが、私は更に言いました。

「あなたはこれら全てに繋がる門であるということを
しっかりと意識してください。
もしこれらのテーマや、皆が避けるような難しい会話が
できないのであれば、必ずどこかで問題が起こるでしょう」

私にとって大きなやりがいは、
優れた効果的なコミュニケーションは、パフォーマンスだけでなく
社内の仕事のやり方や、会社の文化に対しても大きな影響があるということを
クライアントに理解してもらえることです。

ロイス:
あなたが関わった企業で、何か印象に残った経験はありますか。
どのようにサポートしたのか話して頂けますか?

ジョン:
最も長い期間関わったのは、航空宇宙企業のプロジェクトです。
アメリカの軍用機を作っている会社でした。

「軍用機1台生産するのに18~24か月かかるのでは遅すぎる」
と政府は言うのです。
「もっと早く作ってくれ」と。

そこで、その企業の従業員に会話の仕方を教えることになりました。

そうすることで、部門を超えた仕事が可能になり、
正直なコミュニケーションを取りながら
うまく協力しあって仕事ができるようになる。
そうすれば、作業のプロセスを改善して飛行機をもっと早く生産できる…
と考えたからです。

結果、3年かかりましたが、
生産にかかる期間を11ヶ月に縮めることに成功しました。
チーム全体の速さは、その中の最も遅い人によって決まります。
時間はかかりましたが、非常に有効なプロジェクトでした。

ロイス:
その結果を出すために、具体的にどんなことを教えたのですか。
例をお話しして頂けますか?

ジョン:
その企業では、パフォーマンスが低い人や
仕事がうまくできない人に対してのフラストレーションが溜まっていました。
しかし、誰もその人たちと、どのように「難しい会話」をしたら良いかが
分からないままでした。
だから面と向かって会話をするのをずっと避けていたのです。

私の同僚が1万人にアンケートを取りました。
彼のリサーチによると、89%の人がこう答えたそうです。

「会社に害を与えることをした同僚やクライアントに対してでも、
 自分は立ち向かうことはしない、できない」と答えたのです。

ロイス:
それは驚きですね。

ジョン:
このような「難しい会話」をしたくない、できない人がこんなに多く
いるのですから、仕事の仕方や生産性にも影響が出てきます。

ロイス:
話し合えば解決法を見つけることができますが、
そのまま放っておいてしまうのですね。

ジョン:
何も言わないのです。

ロイス:
何も言わない方が安全だと思う人も多いですが、
実は何も言わないことの方が危険なこともありますね。

ジョン:
その通りです。
何も言わなければ何も変わりませんから。

ロイス:
非常に興味深いです。
ジョン、あなたはどのようにしてこの仕事についたのですか?

ジョン:
本当に知りたいですか?

ロイス:
はい、とても興味があります。

ジョン:
私は以前から、人と仕事をすることが好きでした。
以前、英文学の修士号を取ろうとしていて、
大学でも教えている時代がありました。
その時「組織の中で人と一緒に働くということから
学ぶことを教えるのも人の役に立つのでは」と思い
組織行動論の修士号を取りました。

大学を出てからの最初の仕事は、
企業用トレーニング・プログラムの開発でした。
アクティビティやスクリプトや動画も自分で作りました。
そうしたら、そのプログラムが非常に人気になったのです。
そこで初めて、この仕事が自分に向いていることが分かりました。
私は人のために、簡単に応用できる実用的な物を作ることが
好きなのです。
そこから始まりました。

それからはコンサルタント会社で働いていましたが
独立して、クライアントのニーズに合わせて
自分の商品を開発するようになりました。
そのようにして、今の仕事につながっています。

ロイス:
独立して仕事をするのはどうですか。
自分が全部責任を負うことになりますよね。

ジョン:
非常に解放的です。
私は物を作るのが好きなので、
自分で時間をかけて色々開発したり
企業などでうまくいくかどうかテストするのはとても楽しいです。

また商品を企業に引き渡したり、成果について聞くのも好きです。
大変なのはアップダウンが激しいことですね。
次のクライアントを見つけたり、
自分の信頼性を上げたりすることは難しいです。
自分のことを知らない人に受け入れてもらうことは
大変なことですから。

ロイス:
私にとっても、それはずっと大きな課題でした。
コンサルタントとはそういうものですよね。
私の場合、見込み客を見つける最も良い方法は、
既存顧客を通して見つけることでした。
あなたの場合はどうですか。

ジョン:
私の場合も同じです。
転職したクライアントが、転職先の企業でも
仕事の依頼をしてくれたりすることも少なくありません。
「ジョン、また来てよ」って。
または、顧客が紹介してくれたりもします。
「わー、こんな問題、どうやって解決したらいいんだー!」っていう時に、
以前の顧客が「その問題なら解決してくれる人、知ってますよ」とね。
そして連絡をくれたりするんです。

ロイス:
あなたの著書『オーバーカミング・フェイク・トーク』は
どんな内容の本ですか。

ジョン:
もちろん「フェイク・トーク」つまり、「うわべだけの会話」ではなく
「リアル・トーク」つまり、本音で会話をする方法について書いています。

ロイス:
悪い癖を直したりとか?

ジョン:
それに必要な会話スキルについても書かれています。
「フェイク・トークとは一体何ですか?」
とよく聞かれます。
簡単ですよ。
フェイク・トークとは、上手くいったと思っても、
会話の後に何も変化が起こらない。
これがうわべだけの会話、フェイク・トークです。
家庭内や子供たちや夫婦の間、もちろん職場でも
同僚やベンダーやクライアントとの間などでも起こることです。
よくありますよね。

実はタイトルを『リアル・トーク』にしたかったのですが
出版社に『フェイク・トーク』の方がセクシーだよ…と言われまして
結局そのタイトルになってしまいました。

しかし私たちはきちんとした、結果の出る、
本音の会話の仕方を教えています。

ロイス:
『オーバーカミング・フェイク・トーク』
つまり「フェイク・トーク」を克服するのですね。
では「フェイク・トーク」を克服するための原則は何でしょうか。

ジョン:
本来の原則は8つあります。
しかしトレーニングでは少し教え方を変えています。
7つの原則でさえも覚えるのが大変なので・・・

ロイス:
7は特別な数字ですからね。

ジョン:
7は魔法の数字ですからね。
でももう先取りされてしまいました。

8つの原則の1つ目は「自覚」です。
自分自身についての自覚や、
自分と相手の間の関係について自覚がないと
話になりません。

2つ目の原則は「知識」です。
会話をするためにどんなスキルが必要か?
そしてそれらのスキルをどのように使うか?ということです。

ロイス:
多くの人は喋るだけで十分だと思ってしまいがちですね。
そのスキルとはどんなものですか。

ジョン:
『リアル(REAL)スキル』というものです。
REALは、「R」「E」「A」「L」と綴りますが、それの頭文字に意味があります。

Rは、
・Recognize and suspend:「認識と中断」

Eは、
・Express「表現」

Aは、
・Ask「質問」

Lは、
・Listen and attend「よく聞き、集中する」
の略です。

「認識と中断」は、先ほどの「自覚」の原則に関係しています。
状況をうまく認識し、考えを一時的に中断するのです。
何かがうまくいっていない場合は、
まずその状況を作り出しているであろうあなたの考えを認識し、
それを一時的に中断し、違う方法を試すのです。

「表現」は、あなたのメッセージを相手に伝えることですが、
相手が身構えするような話し方をしないことが重要です。

「質問」はもちろん質問をする、ということです。

そして最後は「良く聞き、集中する」です。
話は耳で聞きますが、耳以外にも目や心で相手の話に集中します。
これらが本音の会話をできるようになるために
私たちが教えているスキルです。

ロイス:
これら8つの原則はあなたの人生にも影響を与えましたか。

ジョン:
まだ8つの原則を説明し終わってなかったですね。
先にそれを説明しましょうか。

ロイス:
お願いします。

ジョン:
2つ目は「知識」の原則でしたね。

ロイス:
その後に質問に答えてくださいね。

ジョン:
約束しますよ。

3つ目の原則は「準備」です。
つまり、あなたがこの会話から何を求めているか、
ということについて考えることです。
ほとんどの人は会話の準備をしません。

いきなり会話に飛び込んで、全てがうまくいくと思いがちです。
でも、私たちの脳の3分の2は、元々ネガティブ思考だそうです。

そのため会話の前に準備をしなければ、
会話の最中に闘争・逃避反応を起こしてしまいます。
準備をするということは非常に重要なのです。

4つ目の原則は「反映」です。
誰でも特有の交流のスタイルを持っています。
相手のスタイルを把握して合わせることで、
相手も「この人は仲間なんだ。正直にオープンに話しても大丈夫なんだ!」
ということを認識します。
そうすることでうまくお互い理解し合うことができます。

そして最後の4つの原則は先ほど『リアル(REAL) スキル』でも
説明したものです。
まず「認識と中断」ですね。
そして「意図」の原則、
つまりあなたの意図を表現するということです。

7つ目は「発見」の原則、つまり質問をするということです。
A の ASK ですね。

そして最後は「理解」の原則です。
相手のいうことに対して集中してよく聞くことで、相手を
理解することができます。

これが8つの原則です。
どれが最も難しいかを知りたいんでしたっけ?

ロイス:
いいえ、あなたがこれらをどう使っているか知りたいのです。

ジョン:
あはは。私にとって最も難しいのを話しましょう。
それは…「良く聞き、集中する」ことです。
誰もが耳を使って話を聞きますよね。
メッセージは「聞こえて」はいるのですが、
相手の言っていることに対して完全に集中するのは
難しいことです。

ついこの間、テレビを見ている最中に妻が私にこう言いました。
「娘が5回も質問をしているのに、あなたはテレビばっかり見て!」
アメリカ革命についての番組だったのですが、
私はまずテレビを消しました。

娘は7歳ですが、誰が味方で、誰が敵で、
なぜ戦争をしていたのか知りたかったそうです。
そこで20分ぐらい彼女の質問に答え続けました。

「これでいい?」と聞いたら
「いいよ!」と言ってくれたので、テレビをつけて番組を見続けました。

多くの人にとって、これは難しいことだと思います。
他のことに集中力を取られてしまって、話をよく聞いたり、
集中することが難しいという場合がよくあります。

ロイス:
特に仕事やプロジェクトに集中力を取られてしまっている時は
立ち止まって話をよく聞くことは難しいですね。

ジョン:
あなたが言うように、「認識と中断」することと
「良く聞き、集中する」ことは関係しています。

「あ、今自分はこの人の話に完全に集中していない」
と気づき集中することは、
まず自分の考えを中断して相手のいうことを聞く、ということです。

また「今は頭がいっぱいだから、1度中断しよう」と、
1度立ち止まることで、
他の人の話に集中するための余裕ができるのです。
「表現」と「質問」の原則はまたちょっと別ですが。

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