マネジメント 2017/03/15

人生の質について。

FROM:ケン・シェルトン
(リーダーシップに関する出版を主な事業と30年以上して行う、エグゼクティブ・エクセレンス社の創業者 兼 編集長)

by スティーブン・R・コヴィー

ここ最近、人生の質を高めたいという人を多く見かける。より意味があり、幸せで、充足感を感じて生きていきたい、と。

ほとんどの人は、現在している仕事で求められる能力、創造力、才能、主体性、機転よりも、より多くの力を持っているはずだ。

悲しいことに、間違った鍵を使って人生の扉を開こうと奮闘している人が大勢いる。間違ったアドバイスに基づいたアプローチをとったり、近道を模索している。人間関係において操作的な方法を使うことなどが良い例だ。

あなたの人生の「畑」において、求める果実を育てられていないのだ。農業における原則は、人間の文化にも同様に当てはまる。

中には、高潔さの証の名の下に高圧的な態度を正当化する人もいる。彼らは、便利さや利益のためには倫理や原則を二の次にしなければいけないこともある、と主張する。

多くの人は、家庭における自分の人生の質と、仕事における商品やサービスの質に相関関係があることが見えていない。組織での社会的・政治的環境や、断片化された外の市場において、意図的に人間関係を乱用したとしても、短期的な結果は得られるからである。

しばしば、お金を沢山稼ぐ人が英雄とされる。俳優、芸能人、スポーツ選手、その他の仕事。彼らは、こう主張する。「私たちは、激しい交渉をし、win-lose の取引をし、一方的なルールで試合をすることで欲しいものを得られるのだ」と。

彼らの言うことに少し耳を傾けてみると、今度は社会の規範が彼らを正当化する。

私は、一切を週末だけで成し遂げようとする人を沢山見てきた。結婚生活を、1回の週末だけで修復しようとする人。会社の文化を、1回の週末だけで築こうとする人。体重を、1回の週末だけで減らそうとする人。しかし、1回の週末だけでは成し遂げられないことだってあるのだ。

生徒は学校で「言われたことをしなさい」と教えられる。講義の内容にそって、試験は行われる。生徒たちはシステムを理解する。つまり、まずパーティーをして勉強は先延ばしにし、試験直前に詰め込んで単位を得る。人生すべてが、このようなショートカットのシステムで動いていると考えてしまう。

しかし、手早く簡単で楽しいだけのアプローチは、畑では通用しない。畑では、私たちは自然の法則に従い、原則によって統治されるからである。原則に基づいた自然の法則は、私たちが気付こうと気づくまいと、従おうと従わまいと、常にそこにある。

効果性の低い習慣は、社会の条件付けに根付いていることが多い。即効性のある何か。短期的な思考。人生においても学校と同じように、私たちの多くが先延ばしにし、最後に詰め込む。しかし、畑で詰め込みをしたらどうなるか?乳搾りをせずに2週間放置し、一気に2週間分搾乳することができるだろうか?

あなたは、この例には笑うかもしれない。
農業でこのような狂気じみたアプローチをするなんて…と。しかし、多くの人は、同じことを会社でやっているのである。

時間を超えて耐えられるものはただ1つ。畑の原則である。

土壌を準備し
種を撒き
耕し
雑草をむしり
水をやり
徐々に育、
成熟させる。

結婚も同じである。一瞬での解決策など存在しないのである。

正しい原則は、コンパスのようなものである。常にあるべき道を示している。そしてもしあなたがその読み方を知れば、迷ったり、混乱したり、矛盾する声や価値観にそそのかされたりすることもない。

原則は人間や社会が発明したものではない。原則とは、人間関係や人間の組織に存在する宇宙の法なのである。それは人間の条件、意識、良心の一部である。その範囲において、人間は気づき生きるのだ。

これらの基本的な原則、つまり、公平・公正・正義・誠実・正直・信頼と共鳴しあって生きてこそ、人は進歩するのである。また、私たち人間は直感的に正しい原則の元に性格や能力が成り立っている人を信用する。信頼は長い時間をかけて築かれるものだからである。

ほとんどの人は、自分の「人格・性格」を高めることではなく、見た目や、その場での「キャラ」を良くしようとするほうを好んでいるようだ。

例えば、新しいスキルを学んだり、スタイルやイメージを作ったりすることを好む。

しかし「人格」というのは、その人の習慣であり、美徳を育む態度であり、自律であり、約束を守ることであり、他の人の気持ちに共感することであり、思いやりを持つことである。

人格形成は、私たちの成熟度を試す真の試験なのだ。自分自身の価値を感じ、同時に高次の意義や原則に従うことが最高の人間性であり、効果性の高いリーダーとしての基盤なのである。

原則に基づいたリーダーとは、畑での能力を持つ人だ。種を土壌をケアし、自然との調和の中で働き、「常に北を向く」原則に基づいた人格をもった人である。農業の原則を知っている人である。彼らは、原則を人生の中心に添えている。つまり、人間関係やミッション・ステートメントをきちんと中心に据えているのだ。

成功とされることを達成していることや、あとから出来上がる特性とは、「二次的な偉大さ」である。しかし、人格が出来上がる前に、いわゆる「キャラ」だけにフォーカスしてしまうことは、根っこもなしに木を育てようとするようなものである。

もし私たちが常に表面上のテクニックやスキルを使って社会的な成功を得ようとしたら、必要な人格の基盤を切り捨ててしまうかもしれない。根っこなしには果実を得られない。それだけのことだ。個人の成功は、公的な成功に先立つ。自己をマスターすること、自己を律することが、他人との良い人件関係の根になるのだ。

もし私たちが人に影響を与えるための戦略や戦術だけを使って他の人を思うままに操ったとしたら、短期的には成功するかもしれない。

しかし、長い目で見ると、そのような二枚舌や真摯さの欠如は不信を生み出す。すること全てが「操作的」と受け取られる。正しい発言をし、正しいスタイルを持ち、正しい意図すら持っていたとしても、信頼がなければ、「一次的な偉大さ」は達成できないのだ。

社会や学校のシステムの中において、あなたは愛嬌をもって良い第一印象を残すかもしれない。他人を圧倒することで勝てるかもしれない。しかし、二次的な特性だけでは、長期的な人間関係にはほとんど価値がない。本当の動機がそのうち顔を出す。

二次的偉大さ…
つまり、社会的地位、名声、富、才能を持った多くの人は、一次的な偉大さや善い人格を持っていないことが多い。この欠如は、ビジネス上の関係であっても、配偶者、友人、子供に対してであっても、全ての長期的な人間関係において明らかになっていく。人格ほど雄弁に語るものはないのだ。

どのような人間関係であっても、構築し始める時は、私たちの内部から始めよう。自分の人格の中、自分の影響力の輪の中から始める。

あなたが自立し、主体性を持ち、正しい原則にもとづいており、価値観を大切にし、誠実さをもち、人生の優先順位に従って物事を進められるようになると、あなたは相互依存の関係に進めることになる。つまり、豊かで強い人間関係を築くことが可能になるのだ。

一次的偉大さには、3つの人格要素が不可欠だ。

・誠実さ
あなたが自分の価値観を明確に特定し、主体的に組織立て、優先順位に従って生きれば、意味のある約束を守れるようになる。そうすれば、自己の気付きと自己価値を発展させられる。もし約束を守ることができなくなれば、あなたの言葉は何の意味も持たなくなる。

・成熟さ
他の人の気持ちを思いやりつつも、自分の感情を表現することができる人は成熟している。未熟で気持ちが弱い人は、自分の地位や権力、年齢や人脈などから力を借りようとするだろう。


・豊かさのマインド
これは、「必要なものは必要なだけ存在する」というマインドである。健康的な自己価値や安心感から溢れ出る感覚だ。これにより、他人と称賛や利益を共有できる。創造性に富んだ新たな選択肢を生むことができる。個人の喜びと充足感を楽しめる。無限の可能性を見出し、ポジティブな人間関係や自己の成長、発展が可能になる。

他の人に恵みを与えていけば、あなたはより、あなた自身に恵みを与えることになる。

他の人を肯定し、成長する能力を信じること。相手があなたを呪ったり、あなたを判断したりする時であっても相手のために祈れるようになること。そうすれば、あなた自身の人格の中に一次的な偉大さを築くことができるだろう。

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