経済 2018/05/11

南太平洋の防衛こそ、日本の生きる道




このように、日本の石油ルートの脆弱性がますます深刻化する状況の中で、いったい日本はどうすればよいのだろうか。


その答えは二つあって、一つは当然ながら、南西諸島の防衛を徹底し、第一列島線を死守することであろうが、もう一つ日本が必ずやるべきことは、「南太平洋地域の防衛」である。


何度も言うように、「マラッカ海峡」を放棄せざるを得ない場合、日本が次に頼るのは「ロンボク・マカッサル両海峡ルート」である。


そしてフィリピン・ミンダナオ島南部を抜けてくるこのルートの出口は、パプアニューギニアの西側に広がる西南太平洋地域であるため、この地域の安全は何がなんでも死守せねばならない。
そのためにも、日本はこのルートの出口付近となる「南太平洋」の安全保障に関与することが重要だ。


ではもし、この「ロンボク・マカッサル海峡ルート」にまでも重大な危機が迫ったらどうなってしまうのだろうか。
すでに指摘した通り、中国は2015年以降、この海域に対しても明白な圧力をかけると宣言しており、日本がその時までに有効な対策を打ち出せるという保証はどこにもない。


そうなると、危機管理の観点からも、このルートの安全航行が脅かされるのは時間の問題であるとして、悲観的に想定しておいた方が安全である。


実は、「ロンボク・マカッサル海峡ルート」の安全航行が揺らいだ場合における「最後の緊急避難的な」資源輸入ルートがある。
それが、「バス海峡・南太平洋ルート」である。


これは、インド洋からオーストラリアの南部、南氷洋近くをぐるりと回り、メルボルン沖とタスマニア島との間の「バス海峡」を抜け、シドニーやブリスベン沖を北上、そのままパプアニューギニア沖、ブーゲンビル島の東を通って日本を目指すルートである。


ある試算によれば、「南太平洋のど真ん中」を通過してくるこの遠大なルートは、マラッカ海峡ルートより2週間以上も余計に輸送日数を要してしまい、日本国内の石油需要を一定に満たすためには新たに80隻ほどのタンカーを投入せねばならないことになるため、日本国内における石油価格の高等は必至であるとされている。


しかし、これはまさに準戦時状態にほかならないから、この「南太平洋ルート」さえ守っていれば、その間だけでも食いつなぐくらいはできるだろう。
逆に、この「最後のルート」さえ守れなくなった場合、香港紙『信報』が指摘する通り、間違いなく日本は飢え死にすることになる。



平成25年7月25日発行
丸谷元人著『日本の南洋戦略』
第一章 いま、南太平洋で何が起こっているのか  pp. 38-39


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