セールスライティングって




リッチ・シェフレン
ナビゲーターの中谷です。

最近、いろんな人のライティングのレビューをする機会が増えたんですが、、、

セールスライティングを実践する人が増えているのは良いことだと思いますしリッチのD3も良い教材ですし。。。

なんとなく感じたのは、論理的なものが多いけど、どれもリアリティに欠ける・・・頭だけで書くとそうなるんだなと。

本当のセールスライティングってのは、こういう風に人の心を動かすものだよというのを、今日は紹介したいと思います。


虎屋菓寮 赤坂本店 十七代 黒川光博さんのメッセージ

十七代 黒川光博より 赤坂本店をご愛顧くださったみなさまへ

赤坂本店、および虎屋菓寮 赤坂本店は、10月7日をもって休業いたします。

室町時代後期に京都で創業し、御所御用を勤めてきた虎屋は、明治2年(1869)、東京という全く新しい土地で仕事を始める決断をしました。

赤坂の地に初めて店を構えたのは明治12年(1879)。明治28年 (1895)には現在東京工場がある地に移り、製造所と店舗を設けました。

昭和7年(1932)に青山通りで新築した店舗は城郭を 思わせるデザインでしたが、昭和39年(1964)、東京オリンピック開催に伴う道路拡張工事のため、斜向かいにあたる現在地へ移転いたしました。

「行灯 (あんどん)」をビルのモチーフとし、それを灯すように建物全体をライトアップしていた時期もありました。周囲にはまだ高いビルが少なかった時代で、当時 大学生だった私は、赤坂の地にぽっと現れた大きな灯りに心をはずませたことを思い出します。

この店でお客様をお迎えした51年のあいだ、多くの素晴らしい出逢いに恵まれました。

三日にあげずご来店くださり、きまってお汁粉を召し上がる男性のお客様。

毎朝お母さまとご一緒に小形羊羹を1つお買い求めくださっていた、当時幼稚園生でいらしたお客様。ある時おひとりでお見えになったので、心配になった店員が外へ出てみると、お母さまがこっそり隠れて見守っていらっしゃったということもありました。

車椅子でご来店くださっていた、100歳になられる女性のお客様。入院生活に入られてからはご家族が生菓子や干菓子をお買い求めくださいました。お食事ができなくなられてからも、弊社の干菓子をくずしながらお召し上がりになったと伺っています。

このようにお客様とともに過ごさせて頂いた時間をここに書き尽くすことは到底できませんが、おひとりおひとりのお姿は、強く私たちの心に焼き付いています。

3年後にできる新しいビルは、ゆっくりお過ごしになる方、お急ぎの方、外国の方などあらゆるお客様にとって、さらにお使い頂きやすいものとなるよう考えています。

新たな店でもたくさんの方々との出逢いを楽しみにしつつ、これまでのご愛顧に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

虎屋17代

代表取締役社長 黒川光博

(とらや HPより引用)

売り込まれていないはずなのに食べたくなる


どうですか?文字数にして約900字程度の文章で、セールスライティングと言いましたが、何かを売り込むといった要素は、ほとんど感じられないと思います。


ですが、何も売り込まれてはいないはずなのに、なぜかこのとらやの和菓子が食べたくなる。。。(笑)これこそがセールスライティング。


文章はまず、店の歴史から始まります。創業年数が購買意欲に影響を与えることは少ないと言われるようになりましたが、それでも室町時代から続き明治昭和と続く店の歴史は、権威性としてもまた社会的証明としても機能してるように感じませんか?

それだけ長く続けられるということは、間違いなく良い店なのだろうというのが伝わる。。。


リアリティが共感をよぶ


店主のストーリーが入り、そこから、今度はお客さんとのストーリーに切り替わります。ここの描写が、とにかくリアリティに溢れてます!

3日と空けずに訪れる男性。初めてのお使いに来た幼稚園児と、それを見守る母親。100歳を越え、食事が喉を通らなくなってもなお、とらやの和菓子を愛したお婆さん。

マジックナンバーと言われる、いわゆる3という数字にちなんで、3組のお客さんのストーリーが描かれています。

そのどれもが、とらやの和菓子の素晴らしさを表していて、テスティモニアル、、、いわゆるお客様の声として機能していますし、すべてが情景として目に浮かぶ、、、つまり、ビジュアライズしているところが素晴らしい。。。

しかも、この部分で秀逸なのが、幼稚園児から100歳までという年齢の幅の広さが語られていることです。共感ポイントというのは、表現の中のギャップの中に収まる。

この文章の場合は、幼稚園児から100歳の間にいる人は全員、何かしら共感できる可能性があるということ。。。これが40歳から60歳の間のお客さんのストーリーだったなら、40歳以下の人や60歳以上の人からは、「ふーん、そうなんだ。」ぐらいの共感しか得られない可能性もあります。


信念の置き換え



さらに、実はこの部分では大きな信念の書き換えが行われています。これはリッチがセールスライティングについて語っている中でも、かなり大きな要素ですが、それを見事に実現しています。

それは、まず最初のお汁粉を3日と空けずに食べに来た「男性」の話で行われています。甘味と言うと、女性をイメージするところですが、ここで男性と持ってきたことで、女性だけではなく男性も食べる和菓子という信念の書き換えが行われています。

この後の流れはわかりますね?同じように「幼稚園児」を出すことで、和菓子は古いとか老人が食べるものという信念を、若い子も好んで食べるという信念に書き換えています。

そして「100歳」のお婆さんの話を持ってくることで、たとえ病床にあっても美味しくいただける。食事制限などをするのが当たり前の今の世の中ですが、そんな中でもとらやの和菓子は愛され続けるという信念の書き換えをしてるわけです。。。

僕は和菓子とか食べないですけど、これを読んだら、和菓子が好きか嫌いかは抜きにして、とにかくとらやの和菓子は一度食べたいという気持ちにさせられてしまいます(笑)


想いを伝える


最後は想いを伝えています。今までのお客さんのこと、これからのお客さんのこと。。。ストーリーで語られた性別や年齢のギャップに加え、人種にまでおよんで全てのお客さんに対する想いを伝えています。

これらのメッセージは、ペルソナを使ってターゲットを絞るやり方とは逆行していますが、信念の書き換えを行うということで、より多くの顧客を取り込むという、まさにリッチのセールスライティングのやり方を体現した素晴らしい文章です。

いかがでしょう?僕なりに解説してみました。ですが、文章自体からにじみ出る雰囲気にはエモーショナル、、、つまり論理ではなく感情に訴えかけるものがあるのが伝わったんじゃないかと。

要素の1つ1つには温かみというか、人間の生身の感情に触れたんじゃないでしょうか?

再現性という意味ではロジカルに学ぶことも大事だとは思いますが、その要素の1つ1つに対して、人としての熱意のようなものを込めることも忘れないでください。。。僕たちが動くのは論理ではなく感情で、ということが大きなポイントですね、、、

P.S.
とか言いながらまだとらやには行けてないんですけどね・・・


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