政府はお金を使うべき
私は日本経済の再生に必要なことは政府がもっとお金を使うことだと思っています。
戦後の日本では軍事技術が民生部門に波及するスピンオフ効果はありませんでしたが、戦後における造船技術や電気通信技術の発展は戦前の陸・海軍による技術開発が土台となっています。新幹線を開発した国鉄の技術者たちは、陸・海軍の技術将校や満州国で弾丸列車の開発に携わった人々です。
現在のように3カ月単位で株価を気にしているようでは長期的な技術開発はできません。技術開発は国家によって支えられるべきであり、安易に民営化を推進しているようでは本格的な技術革新などできません。そもそもコンピューターは、第二次世界大戦中、軍の要請によりMITで生まれたものです。
これから日本が高速鉄道など、質の高いインフラを世界に輸出していくことを考えた時、国家の果たす役割は重要です。
建設業の労働人口の不足を解決するうえで必要なことは継続的な公共投資です。かつてのようにGDPの10%程度を公共投資に回せば、大企業から下請け企業に至るまで正社員雇用が生まれます。震災復興特需のように一時的なものであれば、有期雇用しか生まれず、安定した雇用に結びつきません。労働環境を構造的に変えれば、外国人労働者に頼らず、日本国内でも労働人口を確保することはできます。
日本は財政的に余裕があるので、まだまだ赤字には耐えられます。赤字財政になれば円安になり、輸出の拡大によって企業の業績は好調になり、給与の上昇や雇用の拡大につながります。
ここで日本の財政状況について、第5章で述べた内容のレビューも含めて補足しておきたいと思います。
そもそも通貨発行権は国家の機能の一部であり、中央銀行は国家組織の一部です。ただし、行政府の下に中央銀行が位置すると、通貨発行が時々の政治に左右され、ハイパーインフレが発生する恐れがあります。このため、日本では政府から独立した半官半民の法人という形態で日本銀行が存在しています。
しかし、実際は日本国家の一部です。日銀が420兆円の国債を買い取ったことは、政府の赤字が420兆円減ったことを意味します。そう考えると、日本のGDPに占める借金の割合はそれほど多くありません。また、その9割以上は国内で消化されており、しかも円建てです。
2017年9月1日発行藤井厳喜・宮崎正弘著『韓国は日米に見捨てられ、北朝鮮と中国はジリ貧』第7章 日本経済は沈没するのか、上昇するのか(政治・軍事・経済)ーP236