経済 2018/01/15

問い直される企業と国家の関係 - 前編




30年前におけるグローバリズムの議論は、国家というものを前提にしたうえで自由貿易が存在し、各国が経済競争を展開するというものでした。しかし、この30年間の動きを見ると、完全なボーダレス化になっています。国家という存在を抜きにした経済議論になっているわけです。


ノーベル経済学賞を受賞したコロンビア大学教授のスティグリッツが述べているように、グローバリズムがもたらしたのは、先進国における中産階級の没落です。


私は欧州、米国、日本でも企業と国家の関係はどうあるべきか、という議論の結論は出ていると思います。ナショナル・エコノミー(国民経済)を大事にしなければいけない、というのがその結論です。


かつては中産階級や低開発国の賃金労働者も含め、誰もがボーダレス化によって豊かになると言われていましたが、それは幻想にすぎませんでした。儲かったのは一部の富裕層だけです。自由貿易によって大企業は利潤を得ますが、国民はそれによって分配を受けるわけではありません。


したがって、マクロ経済学の観点からすれば、自由貿易が完全に正しいといっても意味がありません。国内の分配の問題を無視しているからです。私がTPPに反対している理由もこの点にあります。


このようにナショナル・エコノミーを鑑みない無国籍企業への反発が、トランプ現象や英国のEU離脱決定など、アンチグローバリズムという形で表れてきていると思います。この点については、拙著『国家の逆襲』(祥伝社/2016年)で詳しく論じていますので、参照していただきたいと思います。




2017年9月1日発行
藤井厳喜・宮崎正弘著『韓国は日米に見捨てられ、北朝鮮と中国はジリ貧』
第2章 アメリカの大変貌ーP87





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