大事なことをどう相手に伝えるか?


From:ダン・ケネディ

コメディアンであるラリー・ザ・ケーブル・ガイのジョークを紹介することから始めましょう。

「俺はどうしようもなく苛立ったのさ。足を失った腹ペコのエチオピア人が坂を転げ落ちるドーナツをただ見つめていることよりもね」

ちょっと悪趣味ですが、面白い言い回しですよね。ここでより大事なことは、彼のセリフは聞く者に鮮明なイメージを想起させるという点にあります。この発言の内容について多くの紙面を割くつもりはありませんが、今回は文章に宿る説得力の「秘密」について考察しましょう。特に印刷媒体というものは、声の抑揚やジェスチャー、ボディーランゲージなど文字以外の情報は一切使えませんが、人の心に鮮明なイメージを植え付けることによって深く伝えることができるのです。

ちょうど私の著書である『Why Do I Always Have To Sit Next To the Farting Cat?』(仮邦題『なぜ私の隣にいつもトラブルがやってくるのか?』)の発注に応えるため、2万5000部の増刷に取り掛かかったところでしたよ。この本はマーケターの指南書として活用されていますが、読者の興味を大いに惹くタイトルも20万部以上を売り上げている理由でしょうね。

フィクション作家などはイメージを刺激する文章を最も得意とするので、いつも私は話題のヒット作を参考にセールスライターとしての腕を磨いていますよ。

コメディ作家もまた上手い表現をしますよね。私は人生の大半でジョークを書いてきたようなものです。実際、17歳から20歳になる前くらいまではコメディの台本みたいなものや、全国配信のニュースレターに掲載されるコメディを書き下ろしていたんですよ。面白くない平凡なジョークだって、そのイメージをもっと愉快なものに膨らませれば笑えるものにできますよ。私がスピーチにジョークを使うときは、まず書くことで想像力を広げ、それを何度も聴衆に伝えてイメージしてもらうことによって自分のものにしてきました。劇作家やユーモア作家であるベンチリーやサーバー、コメディアンやテレビ司会者などのジャック・パー、バーマン、ニューハート、チャーリー・ジャーヴィス、スティーブ・アレンなど、その世界には多くのプロフェッショナルがいますが、私は彼らを30年余りも熱心に研究した真面目な生徒だったんですよ。

とにかく、鮮明な心象風景を作り出す言葉というのはとてつもない大きな力を持っています。最近はその言葉の威力も弱まってきましたが、ブッシュ元大統領は単に「9.11」と言及するだけで何年もその恩恵にあずかってきました。9.11と言えば煙を噴き出しながら崩れ落ちるタワー、パニックの人々が通りに走り出るさま、煤で真っ黒な瓦礫の捜索に疲れ切った消防士の顔など、人々はすぐさま思い浮かべますよね。「テロリストに屈せず倒しに行くか、自分たちの街を守るためにテロと対峙するか」という共通認識を大いに活用したのです。人々は言葉が語られると、それに付随するイメージを思い浮かべますからね。ここで質問ですよ。あなたが発言したり書いたものによって、顧客は具体的なイメージを心に思い浮かべることが出来ているでしょうか?

ほとんどの人は自分で用いる言葉にそれほど神経をとがらせていませんし、言いっぱなしのことが多いですね。でも、私は決してそんなことはしませんよ。何度でも引き出して使える無数のエピソードや秘話、例え話やジョークのセンスを磨き、その数を増やしてきました。どんな商品を販売するにしても、プロなら少なくとも自身のセールスプレゼンテーションや製品、サービスについての鮮明なイメージを顧客に与えられる話のネタを持っているものです。それに比べてアマチュアはその場の思いつきで言葉を繋いでいるにすぎません。あなたはそうであってはいけないし、プロのやりかたを取り入れるべきですよ。

先日もクライアントが私を訪ねこう言いました。「君のやることなすこと、偶然とは到底思えないよ」まさしくその通り。彼の目は節穴ではないことくらい、皆さんにはもうお分かりですよね。

-ダン・ケネディ

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