心理テクニックのワナ



From:北岡秀紀

心理学を使ったテクニックってありますよね?
このテクニックでセールスで売れるようになる、マネジメントが円滑にいく、要求が通るみたいな。

著者と書いてある例だけ変えて同じような内容の本が書店にめちゃくちゃ並んでいます。
それくらい人気があるのだと思います。
実際、私が開催するセミナーでも受講生のペンがやたら動くのがそういうテクニックの話ですしね。

が、正直言ってこういう心理テクニックって自然と使いこなすには相当な修練が必要ですし、テクニックを知っている人に使ったら「こいつ、何しとんねん」と思われるのがオチ。

また、テクニックで短期的にはなんとかなっても、使い手が人として微妙であれば長期的には結局うまくいきません。

なので、基本的にはそういうのは使わない方がいい、というのが私の考えです。

それよりも相手に信頼してもらえるように行動をする方が実は効率的。

時間を守る。言動に一貫性を持たせる。社外に発信しているメッセージと社内でやっていることのズレをなくす、などなど。
まぁ、当たり前のことをやるだけです。

こう言うとセミナーなんかでは地味すぎてウケないんですが(笑)

でも、親友や家族から頼みごとをされたら心理テクニック使われなくてもよほどバカなお願いでない限り聞いてあげますよね?
そこに心理テクニックなんて、入る余地はありません。

こう考えれば、納得できると思います。

とはいえ、ひとつだけ意識している心理テクニック

そういいつつ、私が意識している心理テクニックがひとつだけあります。
それが「理由」です。

なぜ行動して欲しいのか、という理由を伝えること。

『影響力の武器』の中で出てくる有名なエレン・ランガーの実験の話はご存知ですか?

コピー機の列で「すみません、5枚なのですが、先にコピーをとらせてもらえませんか?」とただ要求だけを伝える。
「すみません、5枚なのですが、急いでいるので先にコピーをとらせてもらえませんか?」という本当の理由をつけて要求を伝える。
「すみません、5枚なのですが、コピーをとらなければいけないので先にコピーをとらせてもらえませんか?」という理由になってない理由をつけて要求を伝える。

結果…
要求だけを伝えた場合、承認率は60%程度。
本当の理由を伝えた場合94%。
そして、三番目の理由になってない理由の場合でも93%の承認率だったという。

これ、かなり有名な話ですがそれくらい理由が重要だ、ということがわかります。

でも、マーケティング、マネジメントであれ、当たり前のことだと思い込んでいたり、近い仲間だから大丈夫だろうと理由を言わずに済ませてしまっている事例は多いです。
このクセをやめるだけでも相手の反応が大きく変わります。

理由を伝える手間。
ぜひかけてみてください。

– 北岡秀紀

追伸

ちなみに、上記の実験。
コピーの枚数を5枚から20枚に変えると理由になっていない理由の承認率が、要求だけの場合とほぼ同じくらいに落ちてしまいますが…

本当の理由がある場合は、要求だけの時の2倍の承認率になります。

つまり、ささいなものの場合、理由は適当でいい。
でも、ある程度重くなると、キッチリとした理由が必要だということ。

結局ここでも、テクニックが過ぎるものはうまくいかないことがわかります。


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