4つの真の原則
FROM スティーブ・ヤング
(サンフランシスコ 49ers のクオーターバック。)
「原則」とは、基本となる真実であり、法であり、倫理基準である。だからこそ、原則は時代を超える。状況は変化するかもしれない。新たな困難が生まれるかもしれない。世界そのものが今とは違った形になるかもしれない。しかし、原則は変わらない。そのことを確信すべきである。
原則を発見し、理解し、生きる事以上に価値あることは存在し得るだろうか。
今回は、4つの真の原則について
お話ししようと思う。
1.仕事に対して強い規範を持っていれば、いずれ必ず成功する。
私は自分自身の中に、仕事に対する強い規範があるのが見える。これは、私以前の世代から引き継がれた規範であり、私の家族とアメリカンフットボールの仲間たちによって育まれた規範であある。
私が育った家庭は様々な倫理観や価値観を教えてくれたが、特に、先駆者としての仕事の倫理観を両親が模範となって教えてくれた。今になって振り返ると、私自身の仕事に対する倫理観や規範とプロのアスリートとしての成功には、直接的な相関関係があるとハッキリ言える。
私の父は厳格な人で、
「仕事をしなければ、楽しめるわけがない」
を信条にしていた。そして、自らが模範になって、それを示してくれた。
私は長男として、そしてアメフトチームのクオーターバックとして、規範や困難な状況、ハードワークを愛することを学んだ。慣れてくるのだ。車を時速120キロでずっと飛ばしていると、90キロに落とした時には
亀が這っているように感じる。批判や困難にも慣れてくるのだ。心地よくすらなってくる。
2.自分自身とのみ、競争すること。
過去の自分のパフォーマンスとのみ、現在の自分の努力を比較すること。そうすれば、早く上達する。
今日の競争社会では、人々は生活のいかなる面においても勝者と敗者がいる、という構図を信じてしまっている。これは危険な考え方だ。誰もが、他の誰とでもなく、自分自身とのみ競争するべきである。
アメフトでも、自分自身とのみ競争すること。これは、ジェリー・ライスなどの他の選手から学んだ。自分がなり得る限り最高のクオーターバックになること。強みだけに目を向けるのではなく、弱点も鍛えること。
3.人生に神を添えること。
この数年間で、私は全てに意味を見出すことができるようになってきた。何かが起こったとしても、私の中心は傷つかない。それは、私の人生が「他人が自分をどう思うか」ということを中心に成り立っていないからだ。私の人生の中心には、他のものがある。スポーツヒーローやロックスター、映画のスター、CEOなどを崇拝して時間を無駄にしてはいけない。ただ、天にいる神を敬うのだ。
真の心で神に向かい合うこと。神にあなたをを導かせ、歩ませること。あなたは決して裏切られることはない。私は、人生とは信念を持って生きるプロセスだと学んだ。次に来る経験を備えるための信念。全ての経験は何かを学ぶためのものである、という信念。命は現在を超えて存在する、という信念だ。
4.結束すること。家族になること。
成功するチーム、家族、コミュニティを作り上げるためには、ワンネスの原則に従わなければいけない。そうすれば、夢見た以上に達成できるだろう。結束の原則は本物だ。責任感、リーダーシップ、”家族のような” メンバーへの忠誠心などの永遠の原則に基づいているのだから。
父の働く姿を見ていた私は、父が誰に対しても尊敬を示しているのに気づいた。私はそれを模範として、「家族」とはコミュニティ全体に拡がっていくものだと学んだ。私は自分の家族に加え、アメフトチームという「家族」を持っている。チームでは、家族の原則を使っている。リーダーシップ、責任感、互いへのコミットメント。
1987年、私はサンフランシスコ 49ers に加入した。町に着くと、49ersのオーナーのエドワード・ディバルトロとの面談に呼ばれた。彼のオフィスに入って握手をすると、彼はこう言った。
「ファミリーへようこそ」
チーム全体を家族と同じように扱っていたのだ。
彼は、より一層の努力を求めた。また、共通の何かを見出すことで、チームメイトへの尊重を払うように求めた。そして、チームのための犠牲を厭わないことを求めた。いかなるチームにおいても、無私は成功への鍵だ。
共に働くことで、共生的・相乗的な効果が生み出され、1人1人の力を合わせた以上の強大な力が生み出されるのだ。
チームがスーパーボウルで勝利した時のことだ。ロッカールームは、歓喜の感情で溢れていた。そこに到達するまで苦難や失敗までをも経験した者だけが感じることのできる、深い歓喜だ。一緒に成功したチームと共有できる喜びだからこそ、価値のある経験だった。
私たち情報社会の世代は、共通の原則、つまり、互いの尊重、無私、そして愛に基いて、「家族」を世界全体に広げていく必要があると思う。家族、市町村、都道府県、そして国をも超えて「家族」を拡げていくことを、神は私たちへ課題として出したのではないか。人種や宗教、政府に関係なく、偏見のないひとつの世界を作り上げるために。
49ersにはアメリカの至る所から様々な人種が集まっていた。裕福な人も、貧乏な人もいた。そこで結束しなければ、私たちは負ける。常に共通言語を探す必要があるのだ。それぞれの違いに対して寛容になる必要がある。お互いを「家族」として扱うのをやめてしまった途端、それは何百万人の目に晒されてしまうのだから。
だから私は、オリンピックの標語
この考えが私たちの心に大きく広がり、長きにわたって佇むことになったら、どんなに素晴らしいことか。いつの日か、私たちが常に学びの瞬間や友好的な競争、本物の友情に囲まれる日がくるだろう。
スティーブ・ヤング
サンフランシスコ 49ers のクオーターバック。
本記事は、国連でのスピーチより。