マネジメント 2016/12/21

スティーブン・コヴィー 「私を形作った5つの経験」

FROM:ケン・シェルトン
(リーダーシップに関する出版を主な事業と30年以上して行う、エグゼクティブ・エクセレンス社の創業者 兼 編集長)

[Personal Excellence より]
スティーブン・コヴィー 「私を形作った5つの経験」


私の人生は様々な経験により形作られてきた。
今日は、そのうちの5つをお話ししたいと思う。
その5つの経験から私が学んだことが、
あなたの学びの助けになれば幸いだ。

(1)
私が大学生だった時のことだ。
ガルフ教授という、プロの講演者でもあるスピーチの教授がいた。週末になると、教授は様々な地域に出かけ、パワフルなスピーチを2回行っていた。

学期末になったある日、私は教授にこう聞いた。

「もし全てを1からやり直せるとしたら、何を変えますか?」


教授はこう答えた。

「組織を構築するか、構築メンバーの1人になりたいと思う。 そうすれば、私は教えることや講演することを、更に全うできるから。」

当時私は気づかなかったが、彼のこの発言は、私が後の人生で決断をしていく時に大きな影響を与えた。私自身が講演やコンサルティングをしたり、大学で教えるのをやめて自分のビジネスを立ち上げることになった際に、非常に大きな影響を持ったのだ。

(2)
私が大学で教えていた時のこと。私はウォルター・ゴング博士という客員教授に出会った。
ゴング博士は、大学の教授やスタッフを相手に、「教えるスキルを向上させる方法」という講義をしてくれた。これは、丸々一学期間続いた。ゴング博士の講義の核にあったのは、以下の偉大な原則だった。

「生徒が一番よく学ぶのは、生徒を先生にしてしまうこと」

つまり、生徒自身がコンテンツを教えることで、最大の学びが得られるのである。

私は、仕事でも家庭でも、すぐにこの原則を実践し始めた。当時私は15〜20人ほどの生徒がいる講義をいくつか受け持っていたのだが、私はストレスが溜まっていた。というのも、私にとって教えるのはとても骨の折れる仕事だったし、生徒にとっても、学ぶのがひどく大変だったからだ。さらに、私から影響を受けている生徒も、ごく少数に限られているように思えた。

しかし、ゴング博士の教えてくれた原則を実践してみると、より多くの生徒により効果的に教えられるようになったのである。私の受け持った、とある講義には、1000人ほどの生徒が聞きに来るようになり、更にその講義の試験で、生徒たちは優れた成績を残したのである。

あなたは、このようなパラダイムを持っていないだろうか?

「教師と生徒の比率は、重要である」

つまり、生徒の数が少ないほど、教える質はより高くなる、と。

では、生徒を先生にしてしまったらどうか。生徒の力まで借りることができるようになるのではないか。その結果、てこの原理のように支点が変わる。15〜20人の生徒だったのが、1000人の生徒に効果的に教えられるようになるのである。

生徒1人1人が教師になり、他の生徒に教えることができるようになるのである。そうすると、生徒自身の学びも行動も変わってくる。教えることで、「教えた以上、自分も実行しなければ」という社会に対する約束が生まれるのである。この経験も、私の人生を大きく変えた1つの実話である。

(3)
ある時、ミッションを持つことの重要性を経営者に教えるというプロジェクトに携わった。その際、私は「ミッション・ステートメントを作る時は、メンバー全員を関わらせること」を教えた。

そのプロジェクトが終了した後、すぐに、私は自分の家族を集めて、家族のミッション・ステートメントを作ることにしたのである。母、妻のサンドラ、そして9人の子どもたちと共に、8ヶ月をかけてこのプロジェクトを進めていった。
最終的に完成したミッション・ステートメントは、以下の通り。

「私たちの家族のミッションは、信仰・秩序・真実・愛・幸福・リラックスを育む場所に生き、 全員がそれぞれ自立し、同時に効果的に相互に協力しあい、 イエス・キリストの協議を理解し生きることで、社会に対して価値のある貢献をする。」

私たちは、このミッションを家族で掲げ、毎週家族で、そのミッションを生きているかどうか話し合った。

私たちは、どれくらいミッションに忠実に生きているだろうか?ミッションに従って生きられていないと思われる時も、多々あった。しかし、私たちは常にミッションに立ち返るように心がけてきた。それは、飛行機のパイロットが、飛行時間の90%はルートから少し外れていたとしても、たとえ少し脇道にそれてしまったとしても、フィードバックを元に正しく飛行ルートを修正し、最終的には目的地に達成するようなものである。

(4)
私の経歴は、私自身に次のことを教えてくれた。

「他人に影響を与える鍵は、まず影響を受けることだ。
 まず、理解する。理解されようとする前に、自分から相手を理解する。」

人間とは、相手に理解されたと感じた時にのみ、相手からの影響を受け入れるのである。
私がコンサルティングやトレーニングを行う過程において、一番影響力を発揮することが出来たと感じたのは、人間がどのように考えるかを理解した時や、相手が抱えている一番の問題や、最大の悩みは何かを理解した時だった。そしてそれが、短期的な「イイ話」ではなく、原則を基盤として教えた時に、影響力を発揮できたのだ。

まずあなたから理解するようにすれば、そして、更にはあなたの考えやメッセージを発する際は、相手の感情や懸念の影響を取り入れてから発信するようにすれば、相手に対して大きな影響力を発揮できることに気づいたのである。

(5)
7つの習慣や、原則を基盤としたリーダーシップを様々な国や文化で教える過程において、私は「原則とは、世界共通のものだ」という学びを得た。ミッション・ステートメントを作る際に、関係者を充分に関わらせ、深く誠実に、共に作りあげていけば、そして彼らの良心の声に耳を傾けて、深い質問をしていけば、最終的には一貫したミッション・ステートメントが生まれるのである。

人それぞれ、使う言葉は違うかもしれない。
しかし、ミッションは、人生において人間に共通する4つの領域をカバーしているものなのだ。4つの領域とは、「生きること」「愛すること」「学ぶこと」「レガシーを遺すこと」。

「生きること」は、物理的・肉体的・経済的な領域。
「愛すること」は、人間関係や尊敬、尊厳の領域。
「学ぶこと」は、世界一流の基準をもって、それに近づこうとするニーズ。
「レガシーを遺すこと」は、意味がある違いを生み出し、貢献することである。

私たちは、周りの人々の人生に大きな違いを生み出すことができる。偉大なる教師達は、そのようなことを行っている。コミュニティーや学校、子供や生徒、家族に影響を与えているのである。もしあなたが社会的なことにしか目を向けず、家族をないがしろにしたとしよう。そうすると、タイタニック号は沈んでしまうだろう。すぐにデッキの椅子を並べて、沈まないように揃えなければいけない。教師の役割は大きいのだ。

T.S. エリオットはかつてこう言った。
「決して探求を止めてはならない。 結局のところ、私たちの探求は全て、私たちの原点を再度見出し、 最終的にその場所に真に初めてたどり着くことなのである。」

あなたもこのことは分かっているはずだ。ある意味、常識とも言えることだろう。しかし、必ずしも、常識が常識として実践されているとは限らない。あなたは常に、あなたのスキルや能力を向上させる必要がある。そして、倫理的に生きるという、あなた自分の欲求、周りの人の欲求を大切に育むのだ。

最後に、T. R. Chardinの言葉を引用しよう。
「私たちは、精神的な経験をしている人間ではない。
 私たちは、人間という経験をしている、精神的な存在なのだ」

ここに挙げた5つの経験が、長期的に私を形作った。私の人生、結婚、家族、正しい原則を持った組織の創設、そして倫理的に生きる糧となったのだ。

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