富とお金 2018/12/07

簡単に手に入るものは簡単に失う




アゴラが発行する金融ニュースレター「デイリー・レコニング」の中で、ビル・ボナーはお金について興味深い指摘をしている。これは私たちの「豊かな生活」のテーマにも共通する論点であるが、彼は「お金をたくさん持っていても豊かにはなれない。より貧しくなるだけだ」と述べているのだ。

ボナーは歴史的な事例として、ピーター・バーンスタインの著書『The Power of Gold』(邦題『ゴールド‐金と人間の文明史』)を引用している。16世紀において、スペインは新世界で発見された膨大な量の金のおかげで、世界一豊かな国になれるはずだった。しかし、実際はそうではなかった。そして、金の取引先であった国々は繁栄したが、スペインは徐々に貧しくなり、結果的に破綻してしまったのだ。

いったい、何が起きたのだろうか?バーンスタインによれば、「大量の金と銀の流入はスペインの消費傾向を促し、同時に生産する意欲を抑制してしまった。スペインはまるでギャンブルで一攫千金を手にした貧乏人のように振る舞ったのだ。つまり、その富が臨時収入ではなく、永遠に続くかのように信じ込むようになった」と言う。

この現象は、アメリカの社会福祉が人々の役にほとんど立っていない理由と同じだと、ボナーは主張する。「生活保護の支給日直後の数日は最悪だ。アルコール依存症の者は酔っ払い、薬物依存症の者は薬に手を出し、ほったらかされた子どもたちは深夜2時まで外の通りを遊び歩いている。喧嘩が起こり、商売はうまくいかず、銃撃事件が起きる」

16世紀に金で富を手に入れたスペインは、軍事資金に多額の金を費やしてしまった。カール5世とその息子フェリペ2世は、(1)フランスのフランソワ1世との戦争、 (2)オランダとベルギーの反乱を鎮圧する作戦、(3)エリザベス1世の打倒とイギリス占領を意図した無敵艦隊アルマダ上陸作戦などに、莫大な資金を投入した。

「スペインはこれらの軍事費で資金を使い果たしてしまった。ある程度のところで満足できない人は、何かを手に入れても何も残らない典型だ」とボナーは指摘する。金銀を新たな生産的資産に変えずに消費し続けた結果、スペインは莫大な借金を背負うことになった。そして、遂には1576年のフェリペ王による国庫支払い停止宣告に至り、給料が支払われなかったスペイン軍兵たちは暴徒と化したのだ。「スペイン国軍の総司令官が、昼食代にも事欠くまで困窮していた」とバーンスタインは書いている。

1608年にペドロ・デ・バレンシアが著述しているように、「有り余る金銀財宝は、いつも国や都市を亡ぼす毒であった。人々は皆お金があれば生活できると信じているが、それは真実ではない。耕作地や牧草地や漁業こそが生計の手段である」

富を手に入れる秘訣は(1)貯蓄の大部分を、より価値ある企業へと成長を続ける生産性の高い企業に投資すること、(2)非生産的または逆効果をもたらすようなことに浪費しないよう心掛けることだ。

宝くじを買ったり当てたりすることを夢見て時間を無駄にしてはいけない。そんなことをしても金持ちにはなれない。貧しくなるだけである。

マーク・M・フォード

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