富とお金 2019/01/04

リベラルアーツを学ぶことが重要な理由




なぜか分からないが、私はよく「ビジネスで成功を収めたい大学生に対して、どの教科課程を勧めるか?」と尋ねられる。私の答えを聞いて、あなたは鼻で笑うとまではいかなくとも、疑問に思うかもしれない。しかし、私が勧めるのはリベラルアーツ(人文科学・社会科学・自然科学、及び学術分野にわたる基礎的な教育研究)だ。

インターネット中心のニューエコノミー(IT関連企業を中心とする経済)時代である今、専門的な技術に関する知識は重宝されている。上記の質問をする人の多くは、私の答えが「コンピュータープログラミング」や「通信工学」だと思っているようだ。しかし実際には、その種の教育課程でその分野のトップに立てる可能性はほぼないだろう。起業家として成功したり、企業で出世を果たすことも不可能に近いと私は考えている。

そのように感じる理由はいくつかある。


まず最初に、専門技術に関する知識は一時的なものだからだ。技術が最先端を行けば行くほど、移り変わりは速くなる。あなたが今学んだことは、時がたつにつれて真実ではなくなり、結果的に時代遅れとなるだろう。それらを大学で勉強することは、アナログ盤のレコードプレーヤーが流行遅れだと分かっていながら、レコードを収集するようなものだ。楽しみは得られるかもしれないが、結局は必要のないものに注意を向けているにすぎない。

さらに、私が技術系分野の専攻を好まない理由は、時間がかかるからだ。優秀な成績を得ていい大学院進学を目指している典型的な工学系の学生は、同じ専攻の学生しか理解できないような難解な学科に選択科目のほとんどを当てなければならない。そのような専門分野のせいで、読み書きや思考力などの「ソフトスキル」を身につける時間はほぼなくなる。外出して楽しく過ごす時間は、実質的にはゼロだ。

また、もう1つの大きな理由は、技術系労働者はビジネスにおいて、二次的な役割を果たすことになることだ。『How to Become CEO』(邦題『めざせ!CEO ビジネストップになる「自己実現」のカギ74』)の中で、著者のジェフリー・J.フォックスはビジネスを円滑に機能させる「スタッフ部門」と、ビジネスの利益に直接携わる「ライン部門」をはっきりと区別している。ほとんどの企業では、「多数の人々が経営管理、もしくは営業活動のどちらかに携わっている。企業の経営に携わる人の仕事ぶりは悪くはないし、無能でもないが、最先端を行く人たちではない。また、その企業から頼られていない」と彼は述べている。

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先日、私はこの点に関してFSと話をした。彼はコンピューターサイエンスやその他の「ハイテク」な学科を専攻すれば、ビジネスにおいて「さらに成功できる」という考えを持っていた。彼自身はその教科課程が好きなわけではなかったが、ビジネスで成功するにはその種の分野を学ぶことが利点になると考えたのだ。

そこで、私は彼に「ビジネスにおいて、スタッフ部門の人々(技術者もこのカテゴリーに含む)は、不公平ではあるが、次のように見なされていることが非常に多い」と伝えた。

1.一時的な労働力である:技術者が必要とされるのは彼らの知識が必要なときのみ。

2.コストがかかる:技術者はP/L(損益計算書)では「必要経費」扱いのため、人件費は安い方が会計上都合がいい(あるいは良くみえる)。

3.消耗品:売上が低迷すると、スタッフ部門の従業員の給料を含むすべての経費は削減される。

一方で、ライン部門の従業員は次のように見られている。

1.必要不可欠:利益を生み出す人として常に必要とされる。

2.採算が取れる:ライン部門の従業員は業績が賞与額に反映される。よって、「会社があなたに支払えば支払うほど、あなたは有益である」というジェスチャーになる。

3.代わりがきかない:売上を出す人々は、競合相手に取られたくないと会社が重宝する人材であり、会社にそう思わせるだけの力がある。「あなたが売上を伸ばす分だけ、あなたの代わりを務められる人はいなくなる」のだ。

では、ここでリベラルアーツを学ぶ利点の、もう一方の側面に注目してみよう。


優れたリベラルアーツ教育によって、3つのスキルを取得することが可能だ。それは、高い思考力や文章を書く能力、そして話す能力である。企業世界だけでなく、起業家の世界においても、問題を分析して解決策を考え出し、それらを売り込むことで富を築くことができる。言い換えれば、リベラルアーツはビジネスの成功に必要なスキルを習得するにはうってつけなのだ。ちなみに私は今、単にいい結果を出すことだけではなく、トップに上り詰めるための話をしている。

ビジネスにはどのように商品やサービスを売って利益を出すかという根本的な問題があり、それは常に形を変えて浮上する。そして、それに対する解決策は多く存在する。特定の状況・日時・ビジネスに対してすら、必ず1つ以上の解決策があるのだ。定期的に解決策を考え出し、その策を取るべきだと他人を説得できる人が報酬、つまりはお金や権力、そして名声を得られる。

技術系の教育課程に登録しながらも、自分の思考や文章力、そして話す力を高めることは可能だが、間接的で補足的な知識程度になるだろう。なぜなら、それはあなたが主として関心があることではないからだ。リベラルアーツ教育を受ければ、この先自分のアイディアや解決策を売るときに応用できるスキルが学べるし、それを磨くように努めるのだ。

そうは言ったものの、ここで白状しておこう。私の長男LSFは、チューレーン大学でコンピューターエンジニアリング、そして下のBPFは音楽の勉強を選んだ。どうやら私は、ビジネスの世界では自分のアイディアを受け入れてもらえるが、家庭ではそうではないようだ。仕方がないことだが……

マーク・M・フォード

                Presented by インベストメントカレッジ

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