ビジネスのマスタープランを立てる
FSPを訪れていたSBは、その会社がどんなにうまくいっているかを絶賛しながら帰って来た。彼女は、特に社員たちの会社に対する献身的で忠実な態度と、このイギリスを本拠地とするAGPのもっとも成功しているビジネスが持つ、前向きな企業精神に非常に感銘を受けていたのだ。
このSBに対し、MN(AGPの最高業務執行責任者)はこう言った。「FSPの成功の理由のひとつは、(リーダーである)DGが経営の重要性を信じ、自分の経営的責任に目を向けているからである」
これはマーカス・バッキンガム)とカート・コフマンによって書かれた新刊『First, Break All the Rules: What the World's Greatest Managers Do Differently』(邦題『まず、ルールを破れ-すぐれたマネージャーはここが違う』)の中のアドバイスと繋がっている。FSPが手にしているような成功を達成するためには、マネージャーがやるべき4つの重要なタスクがあると、この本は指摘している。
1. 良い人材を選ぶ。
2. 期待値を設定する。
3. その人物をやる気にさせる。
4. その人物を育成する。
私はこのシンプルなタスクが好きだ。そして、これは私の経験とも重なるのだ。
そう、あなたもこのメルマガで読んだことがあるはずだ …
生産的なチームを作るためにもっとも大切なことは、素晴らしい人材を用意することである。
素晴らしい雇用者とは誰のことか?それは単純に素晴らしい人のことである。どうすればその人が素晴らしいとわかるのだろう?もしあなたがそんな問いかけをしているのならば、あなたにはまだ素晴らしい人材がいないということである。素晴らしい雇用者とは:
・早く出勤する
・一生懸命働く
・正しいことに目を向ける
・仕事が終わるまで続ける
・明るい
・達成を重んじる
・のし上がるだけの賢さを備えている
素晴らしい人材を見つけることは難しい。あまりにも難しいため、ほとんどの人は諦めてしまう。そして、ミスター・パーフェクトなんて存在しないと決めてかかり、妥協して二番手の人材を選んでしまうのだ。
期待値を設定するという点は、ほとんどのマネージャーが問題なくこなすことができる仕事のようだ。いや、撤回しよう。ほとんどの従業員たちにとって、マネージャーの期待値を図ること自体はそれほど難しいことではない。始めにマネージャーがなんと言おうが、どうでもいいのである。数週間もすればすべての従業員は、自分たちが「なんとかやって」いくために必要なもの、前に進むために要求されるものが何かを理解するのである。
やる気と「育成」に関しては、現在サウル・ゲラーマンによる、まさにこのトピックについての分厚い本を読んでいるところである。今後また、ゲラーマンの本や、従業員にやる気を出させるための私自身の経験についてETRの中で話そうと思う。
これらをどうやって力強く、統一的な方法でまとめるのか
先ほども述べたように、私はバッキングガムとコフマンの4つの重要なタスクのシンプルさとそのセンスが気に入っている。しかし、もしその中の1つを選ばなければならないとすれば、絶対に素晴らしい人材を選択するだろう。素晴らしい人とは やる気を備えてやってくるのだ。素晴らしい人は、会社の可能性を育てることによって自分のキャリアを育成する。従って、これら4つすべての目標を経営リストに載せることになるが、素晴らしい人材はあなたの成功の90%を握っているのであるから、そのような人材を見つけ出すことにあなたの時間の80%を割くべきだ。
また、期待値を設定し、やる気を出させ、成長のためのガイドラインを作るためにできることがもう1つある。それは、あなたのビジネスにおいて要となる人物にあなたのマスタープランを見せ、それに関わってもらうことである。
以前、あなたがどういう方向に向かっていきたいのか、何をしたいのかというアイディアの全体像を持つことがいかに役に立つかという、ビジョンについての話をした。マスタープランはそのようなビジョンを具体的に紙に記したものである。これはある一定期間の間にどのようにしてあなたの夢を叶えるつもりかについて、それを読んで、理解し、行動に起こすための概要だ。
良いマスタープランとは、品質目標(アメリカでもっとも成功した学術本出版社として名を馳せるなど)と財政目標(「5億円の総収益と、20%の純益をあげる」など)を含んでいなければいけない。
マスタープランは期待値を設定するために必要なものである。それがあれば、 本当に役に立つ良い仕事と、時間の無駄となる不必要な仕事を簡単に区別することができるのだ。
マスタープランは、その会社または企業の初期の頃から現在、そして将来に必要とされるスキルや知識を確立する、素晴らしい成長ツールなのである。これは従業員がどのようなタスクを自分ができるようにならなければいけないのかということを理解し、やがては楽しみに思えるようにするのだ。
最後に付け加えると、マスタープランは従業員が品質目標に関わり、財政目標の報酬に預かれると感じている場合は非常に大きな動機付けとなる。
これはただのスポーツの例えではない
つい先日、あなたたちに話したいと思うような出来事があった。私はビジネス・デベロップメント・グループのマネージャーと電話をしていた。そして、彼になぜあれもこれもできていないのかと問いただし、もっとしっかり仕事をやってもらおうとしていた。私は不躾ではなかったし、彼を非難していたわけでもないが、彼が約束した多くの仕事を時間どおりに仕上げていなかったことに対して、落胆していることを隠すこともしなかった。
彼はそれを受け、これからもっと頑張ると約束した。私は彼に、これから今までとどのように違ったことをやるつもりなのかを、大まかにまとめたメモを書くよう求めた。(これらのプロジェクトが行き詰まっていたのは努力の欠如のせいではなかった。)
私たちはむしろ不満を残しながら電話を終えた。その後すぐに、私はスポーツトークショーをラジオで聞いていた。明らかに経験豊富な高齢のコーチが、不調な看板選手を変えるためには「マスタープラン」と呼ばれるものを導入することだと話していた。良い野球選手をチームに留まらせ、若い選手に一生懸命練習し信念をつらぬいてもらうために、良いコーチは必ず成功のマスタープランを持っているというのである。ときにはスーパーボールに参加できるほどの実力を作り上げ、改良していく3-5年にわたるプログラムのマスタープランである。
なるほど、そうだったのか。私の同僚の抱えていた問題は、私が彼と話し合って解決できるものではなかったのだ。それは、関連するプロジェクトがどのようにマスタープランの中に組み込まれているのかを明確に説明しなかった私がもたらした問題だったのである。そのうえ、私はそのマスタープランが彼にとってどのようにプラスになるのかということさえも、十分に考えていなかったのだ。
幸いにも、私はそれを5分ほどで解明することができた。私は彼に電話をかけ直し、このビジネスが今後5年のあいだにどのようになるのか(彼が誇らしく思うようなものができるのか)、そしてそれがどれくらいの価値を持つのかということを説明した。すると、即座に、彼の頭の中で甘い幻想が浮かび上がったのである。もし彼が必要なことをすべてきちんと終わらせることができれば、5年後には彼は非常に名高く、価値あるビジネスの社長になっているはずだ。彼は誇りを持って自分の偉業を人々に話し、自分が億万長者であるということを喜んで知ることになるだろう。
彼はその夜遅くまで仕事をし(その晩彼から送られてきたメールでそれを知ることができた)、次の朝も早くから働いた。
だから良い人材を雇い、彼らにマスタープランを渡そう。もしあなたがこの2 つのことをちゃんとやれば、あなたの心配事のほとんどは自ずと解決するだろう。
マーク・M・フォード
Presented by インベストメントカレッジ