富とお金 2018/03/22

アイディアを採用してもらう方法




「ニューヨーカー」誌にエッセイを寄稿しているマルコム・グラッドウェルが、『The Tipping Point: How Little Things Can Make a Big Difference』(邦題『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』)という本を出版している。この本は彼のエッセイと同様、興味深く考察に富んだものだ。彼の意見は私たちの成功に関する話と共通する部分が多い。

本のタイトルの元になっているのは高校の授業でよくおこなわれる実験だ。コップの縁まで水を入れ、その後一滴ずつ注意深く水を足していく。表面張力により水面が縁を超えてもこぼれないが、ある時点で一滴の水が均衡を崩して、超過分の水が一気にコップから溢れる、というものだ。

マルコム・グラッドウェルは人間社会でも同じことが起きると話している。ビジネスや社会の大きなトレンドは、小さな「一滴」が引き起こすというのが彼の理論だ。グラッドウェルは、アイディアは感染症と同じであると主張している。アイディアは何年も温められ、条件が揃ったときに突然広がるというのだ。彼は本の冒頭で「人間にとって進化は受け入れ難いものだ。なぜかというと、最終結果である効果は要因よりはるかに大きいからだ」と述べている。

ただの鋭い考察として片付けてはいけない。この考えはあなたのキャリアに大きな影響を与えるのだ。

私は彼の意見に賛同する。ビジネスシーンで実際にこの現象をよく目の当たりにしているからだ。

顧客のためにアイディアを思いついても、採用されるまでたいてい何週間、何ヶ月もかかる。顧客に何十回も説明しなければならない。これはストレスの溜まるプロセスだ。私も「目の前に利益を差し出しているのに、この人には見えないのか」と苛立ったものだ。

しかし今は、アイディアが芽を出すには土壌の成分のバランス、水、日光といったすべての条件が揃う必要があることを理解している。顧客の心の中でアイディアを花咲かせるには、顧客が提案にオープンでなくてはならないのだ。つまり、最適なタイミングで、理にかなった説得力のある方法で紹介しなければならない。

おかげで、良いアイディアが無視、拒否されても個人的に傷つかなくなった。私にはコントロールできない条件があることを分かっているからだ。同じアイディアを再び紹介するときは、違う言葉で表現するようにして陽の目を見るまで粘るのだ。

そもそも誰のアイディアなのか?


アイディアが採用されるときには、そのアイディアは顧客のものになっていることが多い。それはある意味正解なのだ。私が何度も説明し、顧客がその際に否定していたとしても、彼の潜在意識におりのように溜まって行く。そして私が最後の「一滴」を彼の思考に注ぐことで一気に燃え広がり、彼は自分が思いついた名案だと思ってしまうのだ。

この理論の逆の立場も経験したことがある。私がコップの水の立場だったのだ。自分が考えた素晴らしいアイディアだと思っていたら、同僚に「それがまさに私が言おうとしていたことだ!」と言われてしまい、自分のアイディアではないことに気がついたのだ。

つまりどういうことか?


この理論が人間の自然な現象であることを理解していれば、プライベートでもビジネスでも大いに活用することができる。まず、アイディアが拒否されても落ち込まなくていい。次に、アイディアを諦める必要はない。別の機会に異なる方法でアピールしていこう。そうすればさらに成功に近づく。そして最後に自分のアイディアだと思っていたことがそうではないことに気づくかもしれない。そのときは「一滴」を落としてくれた相手に感謝するようにしよう。

マーク・M・フォード

                                                Presented by インベストメントカレッジ

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