本当に自分で「コントロール」出来ていますか?
From:ダン・ケネディ
かなり昔、ニューヨークの街角では至る所でホームレスを見かけましたよね。彼らは大抵精神的な問題を抱えていてぶつぶつ独り言を呟く者がいるかと思えば、誰もいない所で大声を上げたり、そこにいる全員、もしくはすれ違う人ごとに何かを叫び散らしたりする者もいましたよ。
それに対して世間の人々は少なくとも狼狽し、時には脅威を感じ、そして恐れを抱いていました。
しかし、ニューヨークのホームレス問題の多くは、最近になって全く耳にしなくなったように思います。それがなぜだかは知りませんが、ホームレスに取って代わって増えているのは身なりのいいバカそうな人たちです。彼らは皆、一見独り言のような話し声を大声で上げながら足早に通りを闊歩しています。そして、彼らは街中に留まらず、空港やスーパー、映画館のロビー、公衆トイレに至るまで、あらゆる場所に出現し始めていますよ。
時々、彼らが電話に話し掛けていることに気づかず、私に話し掛けていると勘違いして返事をしてしまうことがあります。彼らは私をバカだと思ったでしょうね。彼らのほうがバカなのですがね。
現代の人々は朝に目を開けた瞬間から夜眠りにつくまで、片耳はiPodに、もう片耳はコンピューターとテレビが合体した携帯にノンストップで繋がれています。それこそ嫌になるほど、毎日メールを送り合い、チェックし続けています。
彼らはそんな状態こそが生産的だと思っているようですが、それは間違いですね。ケージの中のハムスターが、どれだけ車輪を回してもどこへも行けないのと同じくらい無意味なことです。事実、彼らの生産性は減り続けていますよ。時間や優先順位、自分自身の考えでさえ、自らの力でコントロール出来なくなっているのですから。そんな環境下で彼らは物を売り意思疎通を図らなければならないのです。
安直な解釈を述べましたが、テクノロジーに反対している訳ではありませんよ。私自身、お金儲けや問題解決、生産性を向上させるためにテクノロジーを活用していますから。しかし、多くの人々の身に起こっているのは、全く違った現象なのです。
ナポレオン・ヒル最大の名著に『Grow Rich With Peace Of Mind』(邦題『成功哲学』)があります。この本の中で、彼は常に電話線を抜いていたことを述べています。その理由は、徐々に個人の領域に侵入し、コントロールを失わせる脅威から自分自身を守るためですよ。彼は掛ける時にのみ電話を使用し、掛かってきた電話に出ることはしなかったそうです(私も同じようにしています)。電話の未来の姿を、彼がどう考えたか想像してみてください。人々からコントロールを奪う巨大組織ですよ。
「タイムマネジメント」について教えたり、商材にしたりしている人々はよく「時は金なり」と言いますよね。そして概念上では皆それに同意しています。頷いている人のほとんどが実行出来ていないのですがね。さらに、時間の使い方や価値が収入に繋がるともよく言いますね…。しかし真実を正確に述べれば、あなたの収入に反映するのはどれだけ自分の時間をコントロール出来るかなのですよ。そして、もうひとつ、真実を教えましょう。あなたが本当に目を向けるべきなのは、あなたの時間を奪い、コントロールを邪魔してくる人(もしくは物)なのです…。奪われるのは時間だけではありませんよ。あなたのエネルギーや思考、行動を始めるきっかけ、最高のパフォーマンスに必要なものは軒並み持っていかれてしまいますよ。
成功者は皆戦っているのです。一日一日を踏みしめ、関係性を大切にし、プロジェクトで得た経験を活かし、手に入れたそばから失われていくコントロールを取り戻すため、常に次に向けて努力し続けています。取り戻したものもすぐに消え去ってしまうでしょう。そうしたらまた取り戻し、また失うことを何度も何度も繰り返すのです。私はそうして取り戻したものをかき集めて、自分の中に閉じ込めて決して忘れないようにしています。成功とはそういうものなのですよ。
-ダン・ケネディ