第二次漁業戦争の幕開け
200海里時代
「200海里水産•経済領海」を宣言する国が次々と現れた。
アメリカは巨大な海軍が自由に行動できなくなるのではないかと懸念し、「200海里」には反対をしていたが、他国の200海里を認めざるをえなかった。
日本は世界の海で「200海里水産領海」が定着すると、事実上の「締め出し」になるので猛烈に反対をしつづけたが、世界の大波に対抗しきれず、200海里に踏みきった。
マグロの国籍
日本人の大好きなマグロについて一言。
東京の「築地」は世界の漁業界で有名だ。世界中からマグロが送られてくる。日本がクロマグロ一匹を数百万円、いや1000万円を超える値段で買い付けるからだ。ボストン沖で一本釣りで捕れたクロマグロは、数時間のうちにファースト・クラスで築地へ空輸される。
それ故であろうか、「日本はマグロを乱獲している」「日本がマグロ資源を絶滅に追い込んでいる」と激しい非難が今や世界中で渦巻いている。「マグロを数ヵ年間捕ってはいけないようにしよう」という声まで出ている。
マグロは群れを組み、猛スピードで世界の海を回遊する。魚類の中で一番速く泳ぐ。マグロはどの国の資源なのか。チリ、エクアドル、ペルーの「マグロは我々の水産領海200海里の内を泳ぎ成長するので、我々の国の財産だ」という50年前からの主張を、今や世界中の海洋国が手をつないで合唱している。
世界の海から捕獲技術の発達した日本漁船を締め出すためか、または日本から巨額の「マグロ漁業権代」をとるためだ。日本は高い値のマグロを買い続けえるのだろうか。マグロ漁の水揚げが減少してゆくにつれ、世界の海から追い出され、日本は孤立化してゆき、クジラ漁と同じ憂き目を見るのか。
水産大国・日本
不可能と言われていたクロマグロ養殖に成功しそうな人が日本にいる。成功したあかつきには、日本政府は彼に「国民栄誉賞」を与えるべきであろう。また、近畿大学水産研究所はクロマグロを人工孵化させ、成魚に育て、再び産卵・孵化させるという世界で初めての完全養殖に成功したと発表した。「自信がある。そう遠くない時期に完全養殖のクロマグロが食卓に上るだろう」と断言した(『朝日新聞』2002年7月6日付)。
日本ほどの水産海洋国は世界にない。日本人ほど魚の好きな民族もいない。「生」が一番おいしいと分かるほどの舌をもった民族もいない。魚は稲作と同じく日本文化の礎石である。
魚の確保は日本の国益であり、日本文化を護ることである。
狭い島国日本は、「土地」を手に入れることが最も重要と神話のように思い込んでいるが、21世紀の日本の富と文化の発展は「海洋」にある。
海を護れない日本は滅亡の危機にさらされる。
西鋭夫著『日米魂力戦』
第3章「アラスカ半島でイクラ造り」−14