歴史
2017/11/17
疑心暗鬼の中のアメリカ
月面着陸
暗いアメリカに明るいニュースが空から降ってきた。1969年7月21日、ニール・アームストロング宇宙飛行士が人類史上初めて月に着陸し、歴史的な「第1歩」を月の表面に刻み込んだ。
だが、国内では反戦運動が火を噴いており、政府は「嘘つき」と烙印を捺されており、「月着陸」はベトナム戦争から国民の関心をそらすためにでっち上げられた作りごとであるという意見が噴出し、それを信じる人たちが大勢いた。
また宇宙開発で使っている巨額の金は、地上にいる貧しい国民のために使われるべきであると発言する人たちも多く、アメリカにとって誇りになる偉大な業績も、反戦の怒声の中で評価もされず、政府に対する不信の念を強めるために使われてしまった。
ニクソンの苛立ち
(15)勝利が見えない苛立ちが頂点に達したのか、ニクソン大統領がベトナム戦争に反対している大学生は真実を知らない「大馬鹿者どもである」と嘲ったため、反戦運動がより一層激化し、政府と国民との間にできた亀裂もさらに広がってゆく。
反戦デモと警官・機動隊の衝突は、怒声と殴り合いであった。
ケント州立大学の悲劇
1970年5月4日正午、ケント州立大学(オハイオ州)のキャンパスでライフル銃の銃声が13秒間響いた。
大学生4名、即死。1名、全身麻痺。8名、負傷。実弾を撃ったのは大学生と同世代のオハイオ州兵28名であり、社会が真っ二つに割れた悲劇を赤裸々に見せつけた象徴的な事件であった。
西鋭夫著『日米魂力戦』
第2章「アメリカの怨霊・ベトナム」−20