辞書と家庭教育
From: 岡崎 匡史
研究室より
「お母さん、これな~に? どういう意味? なんで?」
ホームステイをしていたとき、子どもが親を質問攻めにしていた。
このとき、母親はどう対応したのか?
ある、美しい光景に出くわした。
子どもと一緒に、辞書を引きながら調べていたのだ。
欧米の中流家庭なら、リビングに大辞典が置いてある。
子どもが知らない単語やわからないことに出会ったさい、辞書を引いて教えていたのだ。母親は、簡単に子どもに「答え」を教えないのである。
私だったら、忙しいからGoogle先生にお願いしてしまうかもしれない。
たしか、Appleの創業者スティーブ・ジョブズは、自分の子どもにIpadやIphoneなどのデジタル器機なるべく使わせず、使用時間を規制していたという。
故ジョブズの家(スタンフォード大学近郊・庭にはリンゴの木が植えられている)
エミール
18世紀フランスの啓蒙思想家ジャン・ジャック・ルソー(1712~1778)の教育論『エミール』は、教育者にとって必読書となっている。
『エミール』では、子どもが理解できない話を無理にしてはいけないという。
なぜなら、子どもは「自分にはできないことがわかったあとでなければ、けっして他人の助けを借り」ようとはしないからだ。
子どもは知らないことに突き当たったときは、「何もいわずに長いことかかってそれを調べている」ので、「やたら人に質問するようなことはしない」。
そして、子どもの「好奇心が十分それにとらえられていることがわかったとき、何か簡単な質問をして、それによって問題を解決する道を示してやるようにするがいい」と、教育の核心をついている。
大辞典の効用
なぜ、リビングに大辞典が置いてあるのか?
それは、「大は小を兼ねる」からだ。
小さな辞書は持ち運びには便利かもしれないが、大辞典に勝るものはない。情報量が格段に違う。
電子辞書ではなく、あえて不便さを求めることで堕落を防げることができる。流し読みをしなくなる。
親が子どもに「問題を解決する道」を示す方法が、辞書の使い方を教えることである。親から子どもへ、「自ら解決する方法」を伝授することで、子どもが自らの手で学び成長してゆく。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・ルソー『エミール 上巻』(岩波書店、1962年)