歴史 2018/06/23

詩人ウルマンとマッカーサー


From:岡崎 匡史
研究室より

マッカーサー元帥は、キリスト教的良心を理想としていた。

マッカーサーは皇太子殿下の家庭教師であるヴァイニング夫人に会った際、キリスト教を日本に根付かせることが重要だと力説している。

マッカーサーは、福音書でキリストが磔刑(たっけい)にされる話が残酷で、肉体的苦痛を強く訴えているので子供の頃から好きになれなかった。

占領が始まり聖書を読み直したマッカーサーは、「真に偉大な思想は肉体を抹殺されても抹殺できないことを示すために物語りが語られている」と気づき、「その思想は日本に根をおろさねばならない」と確信する。

『青春』(Youth)


マッカーサーの強い信念は、彼が愛唱していたサムエル・ウルマン(Samuel Ullman・1840〜1924)の詩、『青春』(Youth)に通ずるものがある。

実業家で詩人でもあるサムエル・ウルマンは、自身の80歳を記念した詩集『80年の歳月の頂から』 (From the Summit of Years, Four Score)を自費出版したことで知られる。


マッカーサーはウルマンの『青春』を座右の銘として、執務室に掲げていた。


青春とは人生のある期間ではなく、
心の持ちかたを言う。
薔薇の面差し、紅(くれない)の唇、しなやかな手足ではなく、
たくましい意志、ゆたかな想像力、炎える情熱をさす。
青春とは人生の深い泉の清新さをいう。

青春とは臆病さを退ける勇気、
安きにつく気持を振り捨てる冒険心を意味する。
ときには、二十歳の青年よりも六十歳の人に青春がある。
年を重ねただけで人は老いない。
理想を失うとき初めて老いる。

歳月は皮膚にしわを増すが、熱情を失えば心はしぼむ。
苦悩・恐怖・失望により気力は地に這い精神は芥(あくた)になる。

六十歳であろうとも十六歳であろうと人の胸には、
驚異に魅かれる心、おさな児のような未知への探求心、
人生への興味の歓喜がある。
君にも吾にも見えざる駅逓(えきてい)が心にある。
人から神から美・希望・よろこび・勇気・力の
霊感を受ける限り君は若い。

霊感が絶え、精神が皮肉の雪におおわれ、
悲歎の氷にとざされるとき、
二十歳であろうと人は老いる。
頭(こうべ)を高く上げ希望の波をとらえる限り、
八十歳であろうと人は青春にして已(や)む。


青春とは心の若さ

日本の占領が開始されたとき65歳であったマッカーサーは、きっとこの詩を何度も口ずさんだことであろう。

「二十歳の青年よりも六十歳の人に青春がある。年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき初めて老いる」というように、マッカーサーの精神的な支えであり若さの秘訣だったのだ。


ー岡崎匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・エリザベス・グレイ・ヴァイニング『天皇とわたし』(山本書店、1989年)
・ 宇野収、作山宗久『「青春」という名の詩』(産業能率大学出版部、1986年)
・サムエル・ウルマン『青春とは、心の若さである』(角川書店、2003年)

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