歴史 2019/03/09

白鳥庫吉の後進指導


From: 岡崎 匡史
研究室より

「早咲きの花はパッと咲いて散るのも早いが、遅咲きの花はゆっくりと美しく咲き果実を残す」

白鳥庫吉が、学生を励ました言葉だ。

東宮御学問所の教務主任として7年にわたり国史・東洋史・西洋史の御進講を担当した白鳥庫吉。彼は「自ら宮中の話」をしなかった。

しかし、白鳥庫吉の弟子たちは、彼の教育方針を書き残している。

歴史を学ぶ方法


白鳥庫吉の口癖は、「歴史を学ぶ時には必ず地図」を見るべきだ。

歴史家の心得として、「たびたび旅行をしなくてはいけない。旅行をしたら必ず、その土地のいちばん高いところに登って、全体を大観しなさい。また土地の古老に会って、その話をよく聴きなさい」と助言をしている。

論文の書き方は、「まず史料を抜き書きして順序よく並らべ、それを自らの文章でうまく綴り合わせばよい」と指導した。

学問と金銭


白鳥庫吉は、金銭には極めて淡泊であった。


「金銭は無いよりも有る方がよいが、一たび収入を得る道に近づくとそれに心ひかれ易いのが、人間の弱点であり、それに心がひかされると学問の研究のおろそかになつてゆく虞れがあるから、自分はそれに近づかないやうにする」


とはいうものの、「富」は一つの力であると認めている。「お金」は、社会に役立つ働きをするので、ことさら「卑しむのは誤り」である。

ただし、「お金」を求めるにも、使うにも「おのづからその道がある」という信念を持っていた。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。

・白鳥芳郎「祖父白鳥庫吉との対話」『白鳥庫吉全集 月報10』(岩波書店、1971年)
・白鳥清「白鳥庫吉」三省堂編『父の書齋』(三省堂、1943年)
・日高第四郎「白鳥先生の追憶」『白鳥庫吉全集 月報1』(岩波書店、1969年)
・三島一「白鳥博士の学風」『白鳥庫吉全集 月報7』(岩波書店、1970年)
・杉勇「白鳥先生を追慕して」『白鳥庫吉全集 月報5』(岩波書店、1970年)

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