手遅れになる前に手を引く
ジュエリーショップ経営者が学んだ教訓をすべてのビジネスに応用しよう
ある昼下がり、私は義弟のRFと株について話をしていた。彼は買った株が下落してしまったことや、彼のポートフォリオを復活させる試みなどについて語っていた。私は個人の意見として、投資家が最近の株式市場から学べる最も賢明なことは、どんなビジネスにも見込みで投資してはいけないことだと彼に伝えた。つまり、そのビジネスがすでに持っている実績に対して投資するということだ(実のところ、これは大きくて重要なテーマなので、詳細については割愛する)。
そして、私は彼に投資家が学ぶべきもう1つの大きな教訓について話をした。それは、損失を最小限に留めることである。誰でも投資で失敗をしてしまうことはある。それを乗り切る秘訣はその時点ですぐに手を引き、元金をできるだけ確保することだ。RFは私に同意したものの、彼がしていたことは逆のことであった。
ストップロスオーダーを活用する理由は、原理上なら容易に理解できる。しかし、実際に実行するとなると簡単にはいかない。悪い投資から手を引くというのは、自分自身の失敗を認めることだからだ。それは辛い決断である。そして、うまくいくかもしれない可能性を諦めるかどうかは、さらに難しい決断なのだ。
だが、たとえそうであっても、時には決断しなければならないこともある。
私はRFにある調査報告の話をした。それは、規律ある方法で株の売買をすることが、株式投資をおこなう際の最も重要な要素だという内容である。つまり、株の購入には一貫した条件を設定し、成果が悪いときには売るのだ。
「これは、ビジネスにおいても同じことが言える」と私は持論を述べた。私が立ち上げたあらゆるビジネスを振り返ると(個別の出版を1つのビジネスとしてカウントすると何百にもなる)、最初から不調だったビジネスは、成功することもほとんどないということだ。「私の経験から、そのビジネスがうまくいくかどうかはすぐ見極めることができる。うまくいくものは最初から順調なのだ。そうではないビジネスはすぐに自爆するが、性質の悪いことにまあまあの滑り出しをしてしまうものもある」と私は言った。
「それは言えている!」とRFは反応した。そして、彼が起業したジュエリーショップに話が及んだ。彼のビジネスでは個人消費者向けの中級クラスのジュエリーを扱い、複数の店舗を経営している。彼いわく、「1億円規模の店舗は最初から1億円の売上があるが、6000万円規模の店は決して1億円には達成しない」そうだ。
彼は、滑り出しがあまり良くなかった店舗の売上を伸ばせるように尽力したという。しかし、そのようなケースで成功することは難しいし、まれなケースとして改善が見られたとしても、大きな変化にはつながらないものだ。「私がいつも話していることとまったく同じだよ。この原則が小売ビジネスにも当てはまるとは興味深い」と私は彼に言った。
「実は」と彼は続けて、「最初の週で、その店を販促するべきか閉店するべきかの判断はつくようになった。ただ、問題は5年のリース契約があるから、閉店するべきと分かっても閉店できないことだ」と言った。
私はその問題を克服するいくつかの方法を提案したが、RFにはそのいずれもピンとこないようだった。そこで、私は彼にもう1つの持論について尋ねてみた。それは、本当に優秀な従業員は初めからとても優秀で、平凡な従業員はいくら時間をかけて教育しても結局は平凡なままだという、ビジネスと似たような概念についてだ。
「それも言えている!」とRFは言った。彼はあるジュエリーショップの店長との間にいくつかのトラブルを抱えていたが、彼を雇った最初の週からこの人ではうまくいかないことがはっきり分かっていたというのだ。RFの問題は、ここでもまた損失を最小限に抑えられなかったことだ。彼のビジネスパートナーたちによる店長の評価は分かれていたし、「人事」部長が店長の解雇はほとんど違法というような印象を与えていたのも、彼の判断を鈍らせたのかもしれない。「上司にいい顔をする店長と、注目を集めたい人事部長がいるということだね」と私は彼に言った。
RFのジュエリービジネスは好調である。彼と彼のパートナーたちはフリーマーケットでメッキのチェーンを売るところからビジネスを始め、今や全国のショッピングモールで6店舗を展開するまでになった。最初は4人の従業員で何でもやっていたが、現在は100人以上を雇用している。
彼らは懸命に粘り強く働き、過去に犯した過ちから学ぶことによって成功してきた。RFが経験した一般的にもよくある2つの過ちとは、業績の悪い企業に長期間投資してしまうことと、それほど優秀でもない従業員を手放さないことだ。RFはそのような過ちを二度と犯したくはないものの、リース契約や労働法がネックとなっている。
しかし、「難しい」と「不可能」はイコールではない。そして、これらの2つの過ちを理解するだけでも大きな成果であり、次のステップへと進む大きな第一歩となるのだ。
この教訓はあなたのビジネスにどのように応用できるだろうか?
マーク・M・フォード
Presented by インベストメントカレッジ