利益の配分:自分への報酬とビジネスへの再投資
遅かれ早かれ、あなたは経営者報酬という厄介な問題にぶつかるだろう。CEOやオーナーの報酬をいくらにするべきか?起業したり、投資経験がある人なら直面したことがあるはずだ。
少し前、「フォーチュン・スモール・ビジネス」誌がこの問題に関する記事を載せていた。サンディエゴの2人の起業家が金持ちになるための長期目標を定め、ハイエンドの家財家具ビジネス(リチャード・フィッシャー・コレクション)を始めたが、思いどおりにはいかなかったという話だ。リチャード・フィッシャーは以前、政治アナリストとして年収1000万円を稼いでいたが、今ではそれが600万円に下がってしまった。彼は「スーパーでお買い得品をチェックするようになったよ」と雑誌のインタビューで話している。
起業家にとって、自分の報酬をいくらに設定するかは困難で重要な問題だ。あなたのビジネスへの貢献度が問われるし、従業員モラルや企業文化といったデリケートな部分にも影響する。報酬額を秘密にしてもいいが、現金をどう使うかという根本的な問題は残る。報酬に回した分だけ、ビジネスの成長に再投資できなくなるからだ。
私は報酬に関しては、あらゆるやり方を試してきた。
以前のビジネスでは、私とパートナーは高額な報酬を受け取り、さらに稼いだ現金をできる限り自分たちに回していた。資産を蓄積しなくていいビジネスだったからだ。ある分岐点を越えれば再投資が要らなくなり、すべてを報酬に回しても利益が出続けていた。
私たちは満足な報酬を得ることができたが、ほとんどのビジネスではこうはいかない。
普通はジレンマを抱えることになるのだ。現在の自分の報酬を増やせば、将来のビジネスの価値が下がってしまう可能性がある。しかし報酬が少なすぎると、低賃金で働くことに不満を感じるだろう。さらに経営判断を誤れば、貯めた現金はなくなるかもれない。
多くのビジネスにおいては、妥当な報酬を払いながら、ビジネス拡大のための十分な現金も残しておくのが賢明な方法になる。
私が考える方法はこうだ。
まず、自分の仕事を役職として考える。あなたがCEOなら、他の誰かをCEOとして雇ったときに払うであろう基本給やインセンティブを給与にする。そして、それを超える高額な報酬を自分に払ってはいけない。
次に、従業員にはできない、あなただけが会社のためにやっていることを認識する。会社の経営方法や、ビジネスを成長させるアイディアといったことだ。これらは正確に評価できないが、とても重要な資産なのだ。世界で初めて科学的管理法を生み出したフレデリック・テイラーは、「通常の賃金で並外れた仕事をする人はいない」と(100年前に)言っている。この事実を頭に入れ、自分の仕事に十分な報酬を払おう。
それから、投資家・株主としての変動的な報酬もある。一定期間の報酬額を決めるのは難しいが、キャッシュフローやライフタイムバリュー(顧客生涯価値)、成長計画、規制や競争環境、個人的な計画を考慮して決めよう。
株主報酬に関しては、私なりのルールがある。ビジネスで利益が出たら、自分に何かしらの報酬を払うということだ。キャッシュフローや成長計画などによって、それは利益のたった5%になるかもしれないが、会社として合理的に支払える額を報酬にしよう。
昨今、CEOの高すぎる報酬が話題になっているが、小規模で成長中のビジネスオーナーならそういう声は無視していい。批判している専門家は、自分でビジネスをしたことも、1億円以上の給料をもらったことも、現金を再投資するか自分への報酬にするかを迷ったこともない人たちばかりだ。
正当な報酬を得ることは大事なことだ。だから他の人が同じ仕事をしたときに支払う額を、自分にも支払うのだ。できるだけ頻繁に妥当な額を支給し、ビジネスに貢献した分を自分に報いよう。
もっと具体的に知りたいなら、ビジネスのパフォーマンス全体に基づく報酬額としては、利益の20〜30%になるイメージだ。会社のトップに立つ経営者(たち)なら利益の半分を得てもいいと思っている。
そしてもう1つ…
ビジネスが黒字なら、基本給を報酬の一部にするのだ。総収益が10億円で純利益が1億円(インセンティブの基となるパフォーマンス)なら760〜1500万円を基本給にし、2〜3%をインセンティブにする。そうすればCEOの報酬は合計950〜1800万円になるだろう。
CEOとしての報酬を受け取った後に利益の何%かも報酬に回せそうなら、その取り分も加えよう。
私は経営者報酬の専門家ではないが、正しいことを言っていると思う。あなたはどう思うだろう?
マーク・M・フォード
Presented by インベストメントカレッジ