富とお金 2018/08/01

グループパフォーマンスの心理学:メンバー全員(怠慢な人も含め)の生産性を上げる秘訣




ソール・ゲラマンは、彼の著書『MOTIVATION AND PRODUCTIVITY』(邦題『人間発見の経営』)の中で、グループ内での人の行動について興味深いことを指摘している。

彼は、どのような職場環境においても、

労働者はベル型の曲線に沿って行動する傾向があると述べている。

数人がグループをリードし、また数人が競争に遅れを取り、そしてほとんどの人は良くも悪くもない中間にいる。やる気を起こさせるプログラムはたいてい、グループをリードするトップの人か、遅れを取っている底辺の人に焦点を当てている。しかし、ビジネスの生産性を上げる秘訣は、真ん中にいる人たちに注目することだと彼は伝えている。

グループのトップにいる人たちは、自分でやる気を起こすことができる。彼らが必要とするのは指示だけだ。一方でグループの底辺にいる人たちは、遅れを取るようにできている。彼らは、仕事をあまりしないことが快適だと感じているのだ(しかし、一般的にはその差は僅かだ)。もし真ん中にいる大多数の人のパフォーマンスを上げることができれば、底辺の人たちもそれに続くだろう。

「グループ全体のパフォーマンスを向上させたいのなら、
重点を置く価値があるのは中間グループだけだ」
とゲラマンは言う。

では、どのようにして彼らの真のモチベーションを上げるのか?


これは、私がずっと考えてきたことだ。どのようにして、グループの平均でいるのが習慣となってしまっている人たちのパフォーマンスを良くすることができるのだろうか。

それは大変な挑戦だ。

ゲラマンは、新しい従業員に時間とエネルギーを注ぐことを推奨している。

彼は、新入社員が向上すれば、グループ全体も向上すると主張しているのだ。「たいていの組織や経営者は、入社して最初の数カ月間に新しい仕事をいちかばちかでやらせ、多くの従業員にやる気を持たせる機会をその場しのぎで済ませてしまっている。しかし、利用できるすべての方法を使って、仕事が割り振られた最初の重要な数カ月間に、すべての従業員を指導することに重点をおいたらどうなるだろうか?パフォーマンス分布表はベル型ではあるが、ベルの形は上に細長く伸びた形になるだろう」と彼は言う。

もしかしたらそうかもしれないが、確信は持てない。比較的少数のトレーニングを受けた従業員が、より大きなグループに影響を与えることはあるかもしれない。しかし、大きなグループが少数派に影響(この場合では良くない影響)を与えると考えたほうが、より論理的である。

私は良いオリエンテーションやトレーニングプログラムに反対しているわけではなく、むしろ賛成している。しかし、ゲラマンの方法では大きなグループの行動を変えることができるとは思えない。では、その課題を達成させるために、街の再建を例にとって考えてみよう。一番分かりやすいのはニューヨーク市だ。

比較的最近まで、ニューヨークは危険でごみ溜めのような場所だった。もちろん、すばらしいところもたくさんあったが、少なくともこれまでの私の人生では、汚くて、うるさくて、危険な場所だったし、夜は特にそうだった。この街を愛してはいるが、ニューヨークが平穏だった時代は、いったいどのようなものだったのだろうと思っていたほどだ。

さて、私が何を言いたいか分かるだろうか?ニューヨークは、再び世界で一番すばらしい街になった。きれいで、安全で、新しいビジネス、レストラン、劇場などがたくさんある。公園もきれいだ。ハーレムやセントラル・パークでも、どこへでも歩いて出かけることができる。2分おきに物乞いからお金をせがまれる心配をする必要はない。

どのようにしてニューヨークはきれいになったのか?そうだ、それは当時の市長であるジュリアーニの政策によるものだ。彼はどのようにして世界で最も忙しく、人が多い街の基準を変えたのだろうか?それは、主要な2つのテクニックによるものだった:

1. 彼はコンピューターの技術を利用して、
    最も必要な場所に警察の人員を配備した。

2. 軽犯罪者も逮捕させた。

1の政策では、警察官自身のパフォーマンス基準を高く設けた。2の政策では、多くの人(ホームレスや不審者、乞食は放っておくべきだと考える人たち)を怒らせたが、このおかげで犯罪は劇的に少なくなった。

ニューヨークは、ホームレスの撲滅や不審者を取り締まって路上での軽犯罪を一掃するだけではなく、殺人、強姦、武装強盗といった重犯罪も劇的に減少させた。犯罪は、一般的な良い住宅街だけでなく、スラム街でも減少した(現代のハーレム・ルネサンスに対するジュリアーニの責任は、議論の余地がありそうだ)。

従業員のパフォーマンスについては、どのように考えればよいのだろうか?

当時のジュリアーニの政策を、どのように従業員のグループパフォーマンスに応用させればよいのだろう?(私は声に出して考えているので、我慢して聞いてもらいたい)。

従業員の休暇期間、社内での私用電話の可否などといった、さほど重要ではないが、それでも仕事のパフォーマンスに関係することについて、徐々に高い基準を設けることは効果的な方法だ。

従業員に、少なくとも15分前に出勤することや、声をかけるときはお互いに礼儀正しく振る舞うよう求めることもできる。または、服装の規定を設けることもできる(私の経験では、服装の規定を設けても何も変わらないようだが)。

つまり、厳しくするのではなく、あなたの組織では高いパフォーマンスをすることが普通だと従業員に知ってもらうことだ。

優秀な人はこういったメッセージを歓迎する。しかし、そのほかの人には、慣れるまで時間がかかるかもしれない。ゲラマンは、ベルの曲線の真ん中から下にいる人は目標達成よりも優先させることがあると言う。彼らは成功ではなく、組織で「生き残るために」安心を求め、会社に従順になり、みんなに調和するということに最大の価値を置く。

そのような人たちに、どのようにもっとやる気を出させたらよいだろうか。あなたが会社の基準を上げるときに、あらゆる取り組みが中間グループに所属する人たちにとって差し障りのないことであるのは重要である。それだけ伝えれば、今回のテーマの目的は十分果たしたと言える。

新しい基準によって彼らが損害を受けたり、仕事が脅かされるわけではなく、仕事も保証されるということを伝えよう。

こういった従業員のほとんどは、パフォーマンスを良くしたりする必要はないと思っていることと、するつもりもないということを覚えておいてもらいたい。彼らはあなたに、保証や安心を期待しているのだ。しかし、少しでもパフォーマンスを上げれば(電話の礼儀作法、社内マナー、時間を守るなど、たいして重要ではない問題について)、より保障され、安全で、配慮されるとあなたが彼らを説得できれば、協力を得ることができるかもしれない。

マーク・M・フォード

                                                Presented by インベストメントカレッジ

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