『楽しみ』だけを優先すると有益なビジネスはできない
「インク」誌によると、「ダグ・ホールは新商品を思い付く全米トップのアイディアマン」だそうだ。
それは私のことだと思っていたのだが......
とにかく、ダグが主張する中でも最も人気のある「アイディア」は、「いいアイディア=面白いアイディア」というものである。それは彼の著書の基盤であり、それによって彼はマネジメントトレーニングの分野でも有名になった。
ホールは、著書『Jump Start Your Brain』(仮邦題『脳を活性化させる』)の初版の表紙に、口に電球をくわえた自分の写真を載せていた。そこで彼が伝えたかったのは、「素晴らしいアイディアを思い付くことも、悪ふざけを思い付くことも、同じくらい簡単なのだ」ということだ。
そのアイディアは人々から高い支持を得て、著書はたちまちベストセラーとなった。彼は講演会に呼ばれ、1時間のスピーチで100万円〜200万円稼ぎ始めた。彼の聴衆は、おもちゃの銃で遊ぶことで金持ちになれるというアイディアが気に入ったのだ。ネットビジネスをしている人たちが同じような方法で何十億円も稼いでいたのだから、ホールのアイディアは正しかったのだ。
しかしその後、ホールは走り回って同じスピーチを繰り返すのが嫌になってしまった。そこで気分転換のために、多くのビジネス界の大物たちがするように、彼も北極まで犬ぞりをしに行き、帰ってきてからビジネスを立ち上げた。それは、彼がそれまでに伝えてきたことを実践するビジネスだった。
そのビジネスを進めていたとき、予期せぬ出来事が起こった。彼の面白いアイディアの大半がうまくいかなかったのだ。見込み客は彼のアイディアを気に入っても、結果にはつながらないという事実に彼は気付かされた。
本当に最高のアイディアと呼ばれる多くは、思い付きではなく、長くて困難なブレーンストーミングから生まれるものだからだ。
私は「楽しむこと」には全面的に賛成である。そして、ビジネスにはたくさんの楽しみがある。ホールが犯した間違いは、「楽しみはお遊びからのみ得られる」と思い込んでいたことだ。しかし、あなたが自分のビジネスをきちんと営み、関心を持ち、意欲を持って働ける環境を作り出せば、そこから多くの楽しみも利益も生むことが可能なのだ。
自社のマーケティング成果を上げるために、オフィスの休憩室にピンボールマシンを購入しようと思っているなら、その代わりに良質の紙とえんぴつをスタッフに買い与えよう。もちろん消しゴムもお忘れなく。
マーク・M・フォード
Presented by インベストメントカレッジ