社長の仕事術 2016/08/10

岩田松雄氏:ミッションの重要性 Part4


岩田:
結局、リーダーが大切なのだと思います。
日本の人口問題、高齢化については20年前から分かっていたわけです。
でも20年前にそういうことをやっていませんでした。
リーダーが5年、10年後、あるいは50年後を見て
こっちへ行くべきだという指針を示さない。

当時の政治家はお金をばらまき
多くの無駄な公共投資していたわけです。
そして今、赤字財政になり移民の難しい問題ができた。
政治家やリーダーが50年、100年後のことを考えていない。
政治家はご機嫌取りをするし、ポピュリズムになっている。
官僚は責任を取らないし、責任を問われないから
自分のために国、税金を使っているわけですよね。

だから僕は、リーダーを育てることを自分のミッションにしている。
そういったことをしっかりと考えられる
多くの素晴らしいリーダーを持つことが
今後の日本にとって最も大切なことだと思います。
資源がないことなど、様々な問題はありますが
良いリーダーがしっかりとしたビジョンやミッションを示せば
何とかなると思います。
日本人はやはり優秀だから。

ただ、現在の日本はリーダーを作る教育をあまりしていない。
だから僕はそういうことをやりたいと思っているし
本も書いているのです。

Q:
岩田さんは素晴らしいコーチですが、
ご自身は何から学びましたか?

岩田:
本です。

Q:
沢山お読みになるんですか?

岩田:
まあまあ読んでますね。
僕の本の読み方は、良い本を何回も繰り返して読むこと。
あなたの書いたこの本もです。
僕が若い人たちによく言うのは
「あなたたちは教科書を1回読んだだけで100点取れますか」
ということ。
歴史でも何でも良いけれども
10回読んでも60点取れるかどうかだと思います。
だったら良い本は何回も何回も読むべきでしょう。
本当にそれを体現化するために。
「Embody」ということですね。

ロイス:
1回読んだだけじゃ理解しきれないことには同感です。 

岩田:
ただ、良い本だけにしましょう。
あまり良くない本は時間の無駄になりますから。

ロイス:
メモを取りながら何回も繰り返し学び、人に教えることが必要です。

岩田:
だから僕は教えることは学ぶことだと思うのです。
やっぱり人は教える時に最も学びますよね。
僕は今ビジネススクールで教えることによって
また、本を書くことによって、
逆に自分がまた学んでいると感じています。
コーチしている人たちからね。

Q:
他の人にコーチングする時、どのようなことを教えますか?

岩田:
小川さんにもお伝えしましたが
まずミッションを作りなさいということです。
会社にとっても、個人にとってもです。
まずはミッション作りです。

ロイス:
ミッションというたった1つのツールですが、
やること全てにおいて、大きな価値と意味を持つんです。
岩田さんはミッションを大変上手に使っていらっしゃいます。

岩田:
実はこういったミッションが大切だということに
気づいたのは、かなり最近のことです。
それまで、何となくは感じていたけれども
スターバックスの社長を始めて、辞めて
『ミッション』という本を書いて
その後コーチングをしたり、コンサルをやったり
いろいろな人の本を読んだりしたからです。

自分で書いたことは
時間が経てば経つほど間違っていないということが
実感できています。
50年以上かかってるんですね、そこに至るまで。
そして、こういう本を書きました。

書いた後、いろんな人を見ていると
やはり自分は間違っていないということを
更に強く実感するようになりました。
僕にとっては最初、こうだろうという仮説が
いろいろ証明されているという感覚なのです。
経営者をやっている時は
そこまで明確に思っていませんでした。

ロイス:
岩田さんはミッションというツールを
本当に理解し、実践しています。
専門外科医が専門分野をマスターしているように。

ミッションについてこれほど語って頂けて、驚きました。
他の話題になっても、最後にはミッションに戻ってきましたから。 
どうしたら他のこと話してくれるかな?
と思っていたんですけれど、そんな必要ないんですね。
ミッションの使い方を本当にマスターされていますから。
もっとあなたから学びたいですよ。

私もミッション・ステートメントは大切だと思っているのに
今までコーチした方々にミッション・ステートメントを
充分に伝え終わる前に他のことを教えていたんじゃないかと
罪悪感を感じるくらいです。

もっとこのことに重点を置くべきだと今日思いました。
思い出させてくださって、ありがとうございます。

以前は私、ミッション・ステートメントの伝道師だったんです。
セミナーなどで書いて頂いていました。
岩田さんは本物の伝道師ですね。
素晴らしいことです。

チェックリストを使う人もいますよね。

「1.会社を設立」
「2.ミッション・ステートメント策定」
「3.年次報告書に入れて、顧客への見栄えを良くする」
「4.壁に飾る。訪問者が来た時に話題に出す。」

こういうのは死んだミッション・ステートメントです。
生きたミッションとは、ザッポスのようなもの。
目的を持ったミッション・ステートメントがあります。
最初はピザの販売から始めたんですけど。

岩田:
例えばスターバックスのコーヒーがまずかったら
そもそも誰も行きません。
お店汚くてゴキブリが走ってたら誰も行きません。

それは当たり前で、その上で良いサービスがあるから
みんなスターバックスのファンになるのです。

僕はこれだけじゃないということを強調する必要があります。
当たり前のオペレーション、当たり前品質。
やっぱりそれはやるべきだし
それを通じて世の中に貢献してるわけですから。

ロイス:
生きたミッション・ステートメントを持つためには、
経営陣のサポートが不可欠です。
経営者自ら、ミッションを生き、語り、行動し、サポートする。
上の人がミッションを持っていなかったら、全体がバラバラになります。
部署だけでミッション・ステートメントを作って
非常に成果を上げた例も見てきました。
でも、それだと「反抗勢力」などと見なされて、
うまくいかないことも多いんです。
だから、組織のトップの姿勢が重要です。

Q:
生きたミッションと死んだミッションは大きく違いますよね。
それが明文化されておらず、社員の心にあるだけだとしても。
ミッションは会社に宿るのではなく、人に宿りますよね。
そして各個人がそれにつながる…

岩田:
要するに社長は見られているのです。
1つ1つの発言や行動、それらは最大のメッセージですね。
だから「To be good」になりなさいということです。
誰かに見られてようが見られていまいが
常に会社のミッションを体現しないといけない。

ロイス:
「御社にはミッション・ステートメントがありますか」なんて聞いても
生きているか死んでいるかは分かりませんよ。
皆「あります」って言うにきまってますから。

それに「意義」や「目標」という観点からあるかもしれないですし。
最高のミッションを、ただ別の呼び方で読んでいるだけかもしれません。
リッツ・カールトンはその一例です。
典型的なミッション・ステートメントではありませんが、
確固たるものがあるんです。

岩田:
ミッションの話をすると
どうしたらミッションを浸透させることができるのか
という質問もよく受けます。

それは経営者としての質問の時もあれば
一担当者からの質問の時もあります。
自分の会社はとても素晴らしいミッションがあるけれど
自分の周りは全然そのように行動できていない。

どのようにミッションを浸透させたら良いのかという質問です。

答えは2つあります。

1つ目はトップが言い続けること。
もう、繰り返し、繰り返し、とにかく言い続ける。

2つ目。こちらの方が僕は大切だと思います。
会社、あるいは経営者が社員に対するメッセージで
最大のものは人事だと思うのです。

人事とは人をどう評価するかという意味での人事です。

極端なことを言えば、先ほどお話したように
自分の後任である社長を誰にするか。
あるいは誰を役員にするか。
もっと言えば誰を採用するか。
それらが最大のメッセージなのです。

そういったミッションを体現している人を
しっかり偉くすれば良いのですが
そうではない人を偉くしてしまったら
いくら社長がこれは大切だと言っても
みんなは、それは違うと思います。

結局は数字を上げれば良いんだ、、、とか。
ミッションを大切にしていない人が偉くなっていけば
いずれそうなります。
僕はそれが最大のメッセージだと思うのです。

評価の仕組みをそれに結び付けなければ
やはり口でいくら言っても浸透しないのです。
言い続けることも大切だけど
誰を偉くするか、誰を偉くしないかということも
非常に大切なのです。

こういうと、別の質問を受けます。
「でも私は社長ではないので、人を評価できないんです」と。
でも、人の前で誰かを褒めることはできますよね?

例えば上司がミッションに従った行動をした時に、
「私は◯◯部長のおっしゃったこと、その行動に感動しました」
と言って、褒めることはできる。

そういうことによって、ミッションはできていくと思うんです。

僕は、ミッションを実現してくれた社員を褒めました。
そうじゃない人に対しては、逆に叱りました。
その繰り返しだと僕は思います。

ロイス:
ミッション・ステートメントは本当に万能に使えるんですよ。
米軍がそれを証明しています。
船や軍隊の指揮を執るために使っています。
ただ「敵を殺せ」と言うだけではなくてね。

ミッションがあれば、困難なことにも立ち向かえます。
岩田さん、今日は本当にありがとうございました。
素晴らしかったです。

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