謝罪する国としない国
列強の悪行
フランスは、今のヴェトナム一帯を「インドシナ」と呼び、大植民地を作り、オランダに劣らないほどの厳しい政策でヴェトナム人を農奴として使っていた。フランスは日本軍に追い出されたのだが、終戦後、またヴェトナムに甘い汁を吸いに戻ってきた。ホーチミンの独立軍と数か年戦って敗れ、ヴェトナム独立かと思われたが、そこへアメリカが割り込んできて「ヴェトナム戦争」となったのだ。今、善人面をしている欧米諸国の悪行の例を挙げると、きりがない。
不思議なことに、日本とドイツだけが、ここ50年間、謝罪しっぱなしだ。それはあたかも、第二次世界大戦だけが戦争であったような錯覚を起こさせる。実際、最近の日本のマス・メディア(新聞、雑誌、テレビ)を見ていると、日本のアジアおよび太平洋での戦争だけが「戦争」のような報道ばかりである。
弱腰外交
目につくのは「謝罪」という漢字だ。国会でも「不戦決議」を出すべきか出さざるべきかと、政治家たちが子供のケンカのようにわめき、あたかも国の命がかかっているかのように、必死になってやっと出したが、何の効果もない。国民は大シラケで、そのうえアジア諸国は軽蔑している。軽蔑しているだけでなく、閣僚人事にまで口を出すようになった。内政干渉もはなはだしい。
例えば、平成7年(1995年)11月13日、江藤隆美総務庁長官が、日本は朝鮮半島植民地中、学校を数多く建てたり、道路や鉄道を整備したり、「良いこともした」と、ある記者団にオフレコで言ったことが韓国側に漏れ、韓国で大騒動になった。日本海の向こうで騒ぎになったので、村山内閣がうろたえ始めた。「江藤をクビにしなければ、日韓国交はないと思え」と脅され、村山首相は速やかに江藤をクビにした。
さらに、村山は日本の首相として、韓国へ「わが国は貴国より計り知れない文化的恩恵を受け、わが国民は貴国に深い親しみと尊敬を抱いてきました」と、へつらいに似た謝罪文まで送った。その直後、「日本国民は間違った歴史認識をしている」との説教まで聞かされた。
憂国の憂い
中国政府も便乗して、「日本はいまだに正しい歴史観を持っていない」と決めつけた。平成6年5月には、永野茂門法務大臣が、南京大虐殺は「でっち上げ」と発言し、クビになった。その3か月後の8月には、桜井新環境庁長官が、第二次大戦での日本参戦は「侵略戦争ではなかった」と言ったため、クビになった。
「憂国の憂い」とは、このような自国の歴史観をも発言できない現状を見ざるをえなくなった時に沸騰してくる怒りだろう。世界中が日本を見て笑っている。日本は「自国の歴史観」がないから、このような無謀なことを国を挙げて行っている。国により歴史認識が異なるのはごく自然であるのだが、隣国と違った歴史観を述べるたびに、叱られ、クビになる。
西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第1章 富国日本の現状−16