自民党独裁政治がもたらしたもの
製造業の行方
日本政府は国内総生産の20%を占める輸出産業に、国の興亡がかかっているかのように人工的な「円安」で支援し続けているが、日本の輸出産業はすでに競争力がある。
日本の優秀な製造業は人件費の低い海外へ工場を移し、世界市場で売り上げを増やし、また日本へ逆輸入して多額の利益をあげている。日本名のブランド(例、自動車、家電製品)は海外で安く造られたのに、日本市場では日本の消費者が独占的な企業(カルテル)を支えているかのように、高く売られている。
これを自由な市場経済とは言わない。だが、これらの大手企業が法人税(税金)で日本の税収総額の70%を支払っている。日本の大手製造業が潰れたら、日本経済は終わり。失業率が30%になり、大恐慌である。日本国民が極度に貧困な生活を強いられる。見たくない、二度と体験したくない地獄絵だ。
世界ランクの中の日本経済
だが、日本国民がこの生活地獄を強いられるかもしれないような怖い「経済競争力ランキング」が2003年5月14日に発表された。スイスのローザンヌ(世界のバレエ・コンクールで有名な町)に本部があり世界で高く評価されている国際経営開発協会(IMD)が査定した結果である。
1位は、3年連続で、アメリカ。上位から羅列する。オーストラリア、カナダ、マレーシア、ドイツ、台湾、イギリス、フランス、スペイン、タイ、日本、中国。日本は生活費、法人税率、移民法、起業家精神、大学教育、株主利益の6項目が30位で最下位(『産経新聞』2003年5月15日付)。
この順位は、日本の優れた製造業までもが世界の秤で量ると競争力を失いつつあると教えてくれているのだろうか。経済や産業にも成長と廃退のサイクル(春夏秋冬)があり、日本が誇る製造業は成熟した日本経済において、高い教育を受け高賃金の人材には適合しない職種になって来ているのだろう。
製造業は、人件費が日本よりも10倍も20倍も低い中国や東南アジアへ民族大移動のごとく移ってゆく。日本経済の活性化は、新しいサービス業務へ転換を始めた時に起こるのだ。このモノからサービスへの移行は長い間議論されているが、実行に移されていない。
日本列島の委員会で話し合っている間に、世界が激変した。日本の製造業に競争力が残っている時に次へ飛躍しなければ、「日本沈没」の惨劇を見る。
真の「構造改革」とは
国際的に競争力がないのは、国内総生産の80%を占め、自民党に票取りのために過保護にされ、毎年弱くなってきている非効率的な産業である。日本が内部から弱くなってきているのは、テコでも動かない四つ巴の構造が日本列島に居座っているからだ。
(1)自民党の50年独裁政治
(2)生産効率を下げる企業別の談合(カルテル)
(3)中央集権体制を固持し、自由競争をさせないように規則作りに専念する官僚
(4)美しかった日本をコンクリートで埋めた不必要な公共事業を代表するゼネコン
これらが一緒になった肉団子状態が日本の経済成長を妨げている。「構造改革」とは、この四つ巴を解体し、消費者を主体とした自由競争を促進する資本主義経済の機構を造ることである。真の「構造改革」は、自民党独裁の崩壊を意味する。
波及効果で官僚政治の崩壊にも続く。
西鋭夫著『日米魂力戦』
第4章「国の意識」の違い –14