日本の憂鬱
平成不況
ところが、日本から多額の援助金をもらいながら大きな軍隊を抱えている近隣諸国は、「日本は軍国主義を復活させている」と焦点の狂った発言を恥も感じず50年間も叫んでいる。アジアの実情は、近隣諸国が絶えず戦火を交え殺し合いを続けているのである。平成日本がその場しのぎの対応を繰り返していては、予行演習(リハーサル)のない外交戦場で惨めな敗北を味わう羽目になる。
近年、私たちは国の行動で感動、ときめき、誇りの鼓動、胸が熱くなるような心の震えを経験したことがあるのか。平成の初めに輝いていた経済がシャボン玉のようにはじけた後、日本で何か楽しい事があったのか。
苦しいことばかり、我慢することばかり、無気力になるばかりの毎日ではないのか。バブル崩壊の象徴である「不良債権」の総額は、今や40兆円で国内総生産(GDP)の10%にまでふくれ上がっている。いや、100兆円だとも言われている。平成不況の大きな原因である不良債権は悪性のガンと同じで、切り取らずまだ大丈夫と先延ばしにしていると、全身が冒されてくる。
デフレ・スパイラル
せめて日本が誇るビジネスの世界に楽しいことがあるのではないか。
あるどころか、1997年からすでに260万以上の人の職がなくなっている。企業は、低賃金で雇えるアルバイト(パートさん)に仕事をさせている。安いパートさんは使い捨てだ。
日本で現在働いている労働者総数の50%は、失業保険もない。日本国民の実質賃金は1997年から毎年下がり続けている。財布に金がないので、消費が落ち、製品を造っても売れず、店に金が入ってこないので、また賃金が減ってゆく。失業者も増える。この悪循環が「デフレ・スパイラル」と呼ばれている地獄の拷問である。
金利ゼロ%の衝撃
このままでは死活問題だと、誰でも気がつく。金を借りる時の利子を安くすれば、国民がお金を借り、その金が経済の新しい血液となって消費を活性化するのではないかとの大きな期待を掛けた自民党政府は、1995年から金利をゼロ%にした。ところが予期せぬ地滑りが起こった。保険会社と年金運営組織が大打撃を受けた。利子6%を支払いますと契約していたのだが、もちろん払えない。払えないまま、大手保険会社が次々と倒産した。
利子が入ってこないので、預金大国日本国民の所得がまた減った。当然、また消費が低下する。ここで消費者のために大規模な減税をするかと思いきや、政府は何を錯覚したのか1989年に新設した「消費税3%」を1997年に5%にまで上げた。これで日本の経済はアキレス腱を切られたかのように動けなくなった。
「経済成長」という言葉まで聞かなくなった。3%から5%に増税したので、表面的には2%上がっただけと思えるが、上昇率は70%である。成長の芽を摘んだ税策だ。
西鋭夫著『日米魂力戦』
第5章 戦争と平成日本 –13