敗者の宿命
謝罪の強要
「謝罪せよ! 日本よ、謝罪せよ!」と、アジア各国から、オーストラリアから、イギリスから、オランダから、中国から、韓国から、日本が同盟国と思っているアメリカからも、声高らかに強要され、「日本のリーダー」といわれている政治家たち、首相たちは海外へ出国するたびに謝っている。
確かに日本帝国は、太平洋戦争中にアジア諸国で、戦争中とはいえ、数々の残酷なことをしでかした。日本兵も日本国民も数百万人が殺された。それが、近代化した戦争だ。勝った国も謝罪をしなければならない残忍な悪行をしている。
東京裁判
だが、「勝てば官軍、負ければ賊軍」で、戦勝国アメリカが敗者日本を軍法会議にかけ、負けた日本の指導者を裁いた。それが、「東京裁判」と呼ばれるものだ。東京裁判での判決で日本の戦争指導者たちは絞首刑になったり、長い間巣鴨の監獄に放り込まれた(これは謝罪ではないのか)。
その判決が公正であったかどうかと疑問を持つのは当然だが、そんな質問自体が焦点を外している。大戦争の後、勝者が敗者を罰するために開いた裁判で、敗者の言い分が通ると思うか。敗戦国だけが謝り、賠償金を支払い、おとなしくしているのが、歴史上の当たり前になっている。
アメリカの悲劇
例外もある。最近の例では、アメリカのヴェトナム戦争だ。1960年代から70年代にかけて、アメリカは膨大な工業力、経済力、武力をつぎ込み、小さな農業国と戦った。
アメリカは50万人以上の兵士をヴェトナムに送り込んだが勝てない。ヴェトナムのゲリラ兵士がジャングルに隠れるので、それなら密林を枯らしてやるわいとばかり、毒素の多い枯葉剤を空から豪雨のごとく撒き、豊かな水田や、世界環境上重要な熱帯雨林も破壊した。
しかし、まだ勝てない。アメリカの兵士が次から次へと戦死していく。死者5万8000人、行方不明者2200人。アメリカ史上最も長い戦争だった。そして、惨敗した。ヴェトナム、ラオス、カンボジアを巻き込んだアメリカのヴェトナム戦争は、アジアの悲劇であり、アメリカの悲劇であった。
西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第1章 富国日本の現状−14