歴史 2018/05/14

広報戦略なき日本外交


ニュースにならない日本

日本政府(外務省)の広報活動が米国内で活発でないから、このような惨めな「日本評」ができたのだ。駐米大使や領事がテレビ討論に出演しているのを見たこともない。

日本人ほど米国製品や農産物や米国債(すでに300兆円)を買う外国人はいないのに、日本は「良いニュース」にならない。日本がニュースにならない。アメリカは広報の国である。

外務省は、米国内で猛烈な広報活動を展開して「ニッポン」のイメージを改善しなければならない。外務省にできないのなら、現地アメリカの有力な広告代理店を雇い、「ニッポン」を超ブランド名にしてもらってはどうだろうか。

日本がどれほどアメリカに、また世界に貢献しているかを大々的に宣伝すべきなのだ。事実、アメリカの繁栄と国威のために、日本は目も疑うほど献身的な奉仕(しすぎ)をしている。日本は、戦後60年間切れ間なくアメリカを支援していると宣伝して貰おう。


ODA大国日本

「日本、ODA額2位に」「首位から転落トップ米国に」と見出しをつけた記事が『朝日新聞』(2002年5月14日付)の夕刊の一面に載っていた。日本のODA総額は2000年まで10年間世界最多であった。

2001年度は、日本が97億ドル(1兆2500億円)で、アメリカが109億ドル(1兆4100億円)なのでアメリカの勝ち、という記事である。

(1)「転落」が目立ったので、日本がODA総額でアメリカと接戦を繰り広げていて、過去10年間勝っていたが、ついに負けてトップの地位から転がり落ちた、と私は読んだ。単に情報としての記事なら、「転落」という表現はあまりにも意図的である。日本で大きな影響力を持っている『朝日新聞』は、日本が浄財努力を怠ったため転落したと言いたいのか。日本国民の人道的な奉仕精神に欠陥があると指摘したいのか。

日本は、過去10年間、桁違いの1番である。例えば、1998年度、2位の米国は日本に遥か及ばず、3位のドイツとフランスは日本の4分の1しか出資していない。4位のイギリスは、日本の5分の1だけ。このような異常な「日本1番」が10年間も続いたのだ。



援助し続ける日本

(2)過去10年間、日本は「失われた10年」と名づけられるほどの惨めな不況にもかかわらず、世界中に15兆円もODA・援助金を与えた。同じ10年間、米国は空前の大景気で酔いしれていた。大金持ちのアメリカは、ODA総額で日本と競争してはいない。

むしろ、「もっと出資してやれ」と日本を煽動したのだ。米国の巨額なGNP(国家総生産)は、日本のGNPの2倍強である。その日本が僅か21億ドル少ないだけだ。

(3)借金漬けの日本は、ODA総額で1番にならなくてもよい。世界でODAを出している国は、22ヵ国(日・米を含む)。出資総額は、514億ドルである。米国の109億ドルと日本の97億ドルを合わせると206億ドルで、日本と米国だけで世界のODA総額の40%も出している。

何か計算の間違いか。



西鋭夫著『日米魂力戦』

第4章「国の意識」の違い –23


関連記事