歴史 2017/11/03

仏教を潰せ


悪魔の化身

(6)虎の威を借りて調子に乗ったディエムは、自分の身内とカトリック教徒の友達たちを次々と政府の高官に任命した。

ベトナムは仏教徒の国である。南ベトナムは、宗教戦争の陰湿かつ残忍な雰囲気に包まれた。



仏教を天敵と見なしたディエムは、軍隊と秘密警察を使い徹底的な弾圧を行う。

当時、ベトナムの人口は、1100万人。カトリック教徒は150万人。人口の18%が82%を改宗させようとしたのだ。


惨劇

悲惨な悲劇を生む。

仏教の高僧たちが白昼、公の広場で自らガソリンを浴び、次々と焼身自殺を実行し、死で抵抗をする。尼僧もサイゴンの寺院で焼身自殺を行う。

ディエムの義理の妹(カトリック教徒)は、「坊主たちが勝手にバーベキューをしているんでしょ」と遺体に唾をかけるかのごとく侮辱した。

さらにディエムは、自分の政策に反対意見を述べる者たちも容赦なく処刑した。残忍な宗教戦争である。


ゲリラ・テロ集団の登場

(7)南北統一総選挙が行われないと判断したホー・チミンは、「ベトコン」と呼ばれたゲリラ・テロ集団に南ベトナムで武力活動を開始せよと命令を下す。日夜、ベトコンによる報復暗殺が行われ、サイゴンは恐怖の坩堝となる。

(8)「助けてくれ」とディエムに懇願されたケネディ大統領は、1960年、南ベトナムに軍事顧問(グリーン・ベレー)を600人送り込む。

2年後、軍事顧問は1万6000人に増兵され、ケネディは「ベトコンに撃たれたら、撃ち返してもよい」と戦闘の許可を与える。これで米軍が南ベトナムの独裁者ディエムを支えることになり、悲劇への大きな第1歩を踏み出した。

世界中で英雄扱いされているケネディ大統領が、富国アメリカをベトナムという泥沼に引きずり込んだ。ベトナム戦争はアメリカの「満州事変」で、あがけばあがくほど沈んでゆく生き地獄となってゆく(グリーン・ベレーは、緑色のベレー帽をかぶった米陸軍の勇猛で伝説的なエリート暗殺特殊部隊である)。



西鋭夫著『日米魂力戦』

第2章「アメリカの怨霊・ベトナム」−14

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