世界が呆れた小切手外交
成金大国
1980年代の超バブル経済の熱病に侵された日本は、あたかも全世界を買い占めることができるのではなかろうかと信じ、「カネ」に糸目を付けず、有名ブランドのホテル、建築物、ゴルフコース、またハリウッドを買いまくった。「にわか成金」が派手にふるまっていると、あちこちからバカにされたと同時に、反感と嫉妬、羨望をも買った。他国の気持ちなど全く考慮せず、傍若無人に振る舞い、札束の力に頼り、海外諸国を日本円の統治下に治めうるのではないかと夢を見ていたのだ。
アメリカも日本円の強さ、日本経済の猛烈な圧力におされ、タジタジになっていた時もあった。「21世紀は日本の世紀」とか「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれ、日本は有頂天で、美しい白昼夢を見ていた。その時、アメリカと日本の真の姿を赤裸々に、容赦なくさらけ出す大事件が起きた。「純粋平和主義」という自家製の麻薬漬けになっていた日本人を動転させる大事件だ。
失墜した日本の信頼
1991年の湾岸戦争である。
日本の対応があまりにも幼稚で「純粋」だったので、アメリカも、ヨーロッパも、また将来日本円経済圏の一員とならんとし、日本の経済を見本としていたアジアも、強烈なショックを受けた。日本は強い国と思われていたのに、一体全体何をしたか。
日本は厳しい現実を把握できず、適切な対策を打ち出すことができない国、とアメリカは見下した。日本にとって最も重要な国アメリカが、世界の秩序を保つために、戦争といった大惨事に突入した折、黙って傍観するのが日本。いや、あれは傍観ではなかった。
あれは、日本が戦争に直面して自国の根性不在を世界中に暴露し、そしてそのまま麻痺状態に陥ったのだ。アメリカだけでなく世界中が日本のうろたえぶりを見た。これが世界最大の経済国、技術国といわれている日本の独自の外交か。
「恩知らずの金の亡者」
アメリカはもっとハッキリと断言する。
「日本は臆病でかつ狡い。日本は度胸といったものを忘れ去った。アメリカであれほど膨大な利益を得て、いざとなったら蒼くなって逃げるのが日本。日本は恩知らずの金の亡者。日本人が大切にしている義理とか恩とかいった心は結局、なんの意味もない。日本を信用してはいけない」
西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第1章 富国日本の現状−5