カタカナに統一せよ
カタカナ専用の意義
2.カタカナ専用によって検閲の労は軽減される。
検閲には最高の言語識別能力が要求される。……カタカナの学習は二、三週間で十分である。
3.カタカナの使用によって、児童たちが一定の学力に達する時間を短縮できる。
戦前の日本では、初等教育の主要な時間が漢字の習得に費やされた。この時間をさけば、他の分野の学習にあてられる。つまり、それによって児童たちは低学年のうちに生産活動に従事できる水準に達することができ、日本の教育水準を低下させることなく労働力の供給を増やすことができるだろう。
4.カタカナの使用は日本でのビジネスの効率を増大させる。
カタカナは電報、軍部の指令、階級の低い人々を対象とした新聞で広く用いられてきた。西洋の標準型タイプライターの文字盤を置き換えるだけで、カタカナは効率的にタイプライターで印字することができるだろう。
カタカナ専用の実用性
さらに、ホール中尉は、自分の提案の実用性を次のように強調している。
1.カタカナ専用は日本に文盲をつくることではない。
字の読める日本人はすべてカタカナも読める。事実、漢字を読めなくても、たいていはより簡単なカタカナは読める。ローマ字化は言語上の利点が明瞭ではあるが、実用的ではない。その理由は、日本で一般的に読まれていないからである。したがって、性急なローマ字化は日本を事実上、文盲国家にしてしまうだろう。文盲は軍占領政府にとり、敵性宣伝にさらされるよりも、いっそう危険である。筆記による意思疎通がなされない近代国家は、混乱をきたすであろう。
2.漢字で書かれている文書を必要な場合にカタカナに移し替えることは簡単である。
この作業は速記文字をタイプ印字するよりも困難は少ない。漢字とカタカナを知っている秘書ならば、誰でもできることだ。
西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第2章 富国日本の現状−12