アメリカの忠実なる奴隷
亀井氏の発言
このような属国精神状態の日本を、アメリカはどう思っているのか。
答えはアメリカからでなく、日本人から出てきた。平成7年4月27日、当時の運輸大臣・亀井静香氏は「アメリカは日本人を奴隷と思っている」と言った。
亀井氏は「あえて比喩で言えば、米国はかつてアフリカから黒人奴隷を買ってきて、富の生産をしていた時期がある。奴隷解放で、近代的生産国家に発展したが、今日、勤勉な奴隷として使えばうまくいきそうな日本人がいる。うまく使う方法はないか、と思っているのではないか、と疑いたくなる対応が目についてきた」と言い、アメリカが対日貿易赤字の減少のため、異常な円高ドル安を放置していることを強く非難したつもりなのだ。
「そうだとしたらどうなんだ」とアメリカがすごんできたら、日本側はどう答え、どう対処するつもりだ。アメリカと本気で経済戦争をやるつもりなのか。「日本はアメリカ支配からの独立戦争」をやるのか。
アメリカの本音
アメリカから見ると、亀井氏の発言は「すぐに替わる日本の一大臣の、取るに足らない不平不満の泣き言」として、一般のニュースにもならないし、しない。
アメリカのお世話になっているくせに、日本は一体全体、何をブツブツ太平洋の向こう側から言っているのだ、というのがアメリカの本音だ。黙ってアメリカの言うとおりにしていれば、日本およびアジアは平和であるとアメリカは思っている。
日本はアメリカの外交、アメリカの国策を日本の都合の良いように変えることができない。日本の国民はこれをしっかりと認識しないので、アメリカに対して、「平等に交渉」しようとする。そして、交渉するたびに失敗し、泣き言を言う。
失敗するのではなく、「日米交渉」をするたびに、いじめられているようなものだ。アメリカから見ると、「日本はなぜ、おれたちの言うことを聞き入れないのだ!?」と、むしろ不思議に思っている。日本の拒絶を「日本はものがわかっていないので拒絶している」と見ている。国際外交につき、太古の昔から人間社会を支配している「力の外交」について、戦後日本は痴呆的に無知だ。
日本は米国と対等か
アメリカは日本を平等だと思っていない。「日本はイコール・パートナー」「グローバル・パートナー」というセリフを吐いたアメリカの大統領レーガンおよびブッシュも、そしてアメリカでも尊敬されていたマンスフィールド元駐日大使が、「日米関係は米国にとって最も重要な二国関係である」と言ったのも、世界の舞台で輝きたいと必死になっている子分を少しおだて上げ、アメリカ国益のために使ってやろうと思ってささやいただけだ。そのような見え透いた外交辞令に踊らされる日本が情けない。
アメリカが太鼓を叩けば、日本は踊る猿。踊れば踊るほど、アメリカに軽視され、バカにされているのが日本だ。そんな非情なアメリカを責めるほうが見当違いだ。アメリカは自国のために当然のことをしているだけだ。外交音痴の日本が現実の冷水を浴びせられ、泣き言を言っている。
どちらが善の国で、どちらが悪の国といった議論ではない。どちらの国が国益を大切にし、自国の独立性を保ち、歴史を大切にし、海外諸国と競争および共存をしていっているかという話だ。アメリカは当然のことをしているだけだ。
アメリカと日本との関係は「民主主義」に基づいた平等ではない。アメリカと日本は、国力と軍事力に基づいた上下関係である。日本が上ではない。
西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第1章 富国日本の現状−4