『國破れてマッカーサー』執筆の裏舞台
同志との出会い
30年近くアメリカに滞在して、帰国した直後、麗澤大学(千葉県柏市)の廣池幹堂学長(現理事長)に出会った。
日本を憂う彼の情熱に感銘を受けた。同志に巡り会った。
『國破れて マッカーサー』を書くにあたり、廣池先生の力強い励ましがあった。多額の研究助成金も頂いた。
友永由美子さん(麗澤大学図書館)は、私の質問に次々と答えを出して下さった。笑顔で。友永さんは麗澤の宝。図書員の鏡。
顕学たちの支え
諸坂成利助教授(日本大学法学部)はルネッサンス的な天才肌の男だ。彼の専門は比較文学で、若いのに、研究論文は数100本もあり、フランス語、スペイン語、そして英語も完璧。抜群の語学力を持っている。作曲をし、荘厳な指揮者にもなる。彼はこの原稿を丁寧に読み、清々しい批評をしてくれた。彼が私の親友であることは、私の誇りである。
労働経済学が専門の下田建人教授(麗澤大学)は私の友人で、フーバー研究所に二カ年間客員教授として滞在し、ノーベル賞を授与された経済学者たちと討論をしていた。私はスタンフォード大学で、毎日昼食を一緒にした。下田先生は卓越した洞察力を持ち合わせている。彼の洞察にはスピード感がある。彼のアドバイスには従うことにしている。
背が高く洗練された美女の熊野留理子さんは、ハワイ大学大学院から「4年間全額支給奨学金」を授与されている。彼女の成績は「全優」。博士論文(比較教育学)を執筆中にもかかわらず、この原稿を読んでくれた。私の生徒であった熊野が原稿にあれこれ注文を付ける。真の恩返しである。
陰の功労者
中央公論新社の平林孝君が編集して読みやすい本にしてくれた『國破れて マッカーサー』は、1998年に単行本として出版され増刷を重ねた。2002年、彼と日米の文化力の戦いについて書き下ろしを出版しようと話し合っていた頃、彼が癌に冒されていると診断された。病魔と闘いながら彼は原稿を読んでくれて、もっと早く書きなさい、と激励さえしてくれた。その本『日米魂力戦』(2003年)が出版される前に、日本は日本を愛した文化人を一人失った。
中公文庫の伊藤彰彦氏は『國破れて マッカーサー』の歴史的な重要さを強調された。説教されたのだ。私は原稿を何度も読み返して、中公文庫の輝かしい「文化への貢献」に恥じない本にしようと努力した。伊藤氏に深く感謝をしている。
ハッと感動させる能力を持った人に出会う時がある。私が「持って生まれたかった」と羨望を超えた「憧れ」を感じる時だ。中公文庫の藤平歩氏の能力は、その憧れである。彼は何も見逃さない。すごい才能だ。この本に彼の手が入り、より一層読みやすい専門書となった。