歴史
2018/11/10
政徳利用厚生
From: 岡崎 匡史
研究室より
最近、大学の学部の名称が、長くなってきている。
「環境情報ビジネス学部」「リベラルアーツ学部」「グローバル・コミュニケーション学部」「医療福祉マネジメント学部」
一昔前であったら、法学部、文学部、商学部、医学部というように、3文字が主流であった。
中央官庁の名称も、3文字が多かった。
文部省(文部科学省)、運輸省、建設省(国土交通省)、通産省(経済産業省)というように。
保健社会省
戦前の日本で4文字の名称案が浮上したことがある。
それは、「保健社会省」。
枢密院で検討したところ、「四字の省なんてありえない」「一国の省に四つの字はけしからん」という意見が出た。
さらに、「保健社会省」には「社会」という文字が含まれている。
当時危険思想とされた「社会主義」を連想させるので好ましくない。
「保健社会省」は廃案。
厚生省の名付け親
枢密院問官・南弘(みなみひろし・1869〜1946)は、中国の歴史書を読みあさる。
漢詩の素養が高い南弘は、歴史書から「厚生」という二文字を選び出した。
「厚生」とは、「衣食を十分にし、空腹や寒さに困らないようにし、民の生活を豊かにする」という意味。中国の古典『書経・左伝』の一節「正徳利用厚生」(徳を正し、用を利し、生を厚うする)に由来する。
南弘が、「厚生省」の名付け親。
こうして、日本国民の体力向上・感染症予防・傷痍軍人や戦死者の遺族に関する行政をつかさどる厚生省(現・厚生労働省)は、1938(昭和13)年1月11日に設立された。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・厚生省五十年史編集委員会『厚生省五十年史』(財団法人厚生問題研究会
1988年)