歴史 2018/01/06

フーヴァー研究所東京オフィス秘話⑥


From:岡崎 匡史
研究室より


フーヴァー研究所東京オフィス秘話ー⑤のつづき

東京オフィスの関係者たちは、日本の各省庁や研究機関や図書館と親密な関係を構築した。

たとえば、国立国会図書館からは3800以上もの日本政府の刊行物がフーヴァー図書館に寄贈されている。


東京オフィスへの理解者


東京オフィスの記録に残っている人物を列挙する。


・猪谷善一(1899〜1980・経済学者・日本貿易協会専務理事)
・金森徳次郎(1886〜1959・法制局長官・国務大臣・初代国会図書館長)
・久留間鮫造(1893〜1982・法政大学名誉教授・大原社会問題研究所所長)
・児玉作左衛門(1895〜1970・アイヌ研究者・北海道大学名誉教授)
・髙木八尺(1889〜1984・アメリカ研究家・貴族院議員・東京大学図書館長)
・髙瀨莊太郎(1892〜1966・東京商科大学学長・文部大臣・通産大臣)
・南原繁(1889〜1974・政治学者・東京帝国大学総長)
・平野義太郎(1897〜1980・中国研究所所長・日本平和委員会会長)
・藤原銀次郎(1869〜1960・王子製紙社長・貴族院議員・国務大臣・軍需大臣)


彼らが具体的にどのような支援をしたのかは明確ではない。

しかし、有益な助言や協力、記録を提供したとされる政財界の人物である。東京オフィスの責任者である東内良雄は、彼らに深い感謝の念を捧げている。


忘却された東京オフィス


東京オフィスの関係者はこの世を去り、関係文書も限りなく少ないのが現状だ。

東京オフィスを構想した奈良静馬は、占領中の1947(昭和22)年3月12日に亡くなる。東内良雄が占領中の1951(昭和26)年にまとめたLiterature on Contemporary Japanという文献が唯一の手がかりだ。

フーヴァー研究所の図書館でさえ、東内良雄による東京オフィスの報告書が1冊しか残っていない。フーヴァータワー1階にある特別貴重図書館で閲覧が許された。

日本の財産ともいえる資料が、なぜスタンフォード大学フーヴァー研究所にあるのか。忘れ去られた歴史に光をあてるために、今後の更なる調査によって全貌を解き明かしていきたい。


ー岡崎 匡史

PS. フーヴァー研究所東京オフィス秘話①〜⑥まで以下の文献を参考にしました。
・岡崎匡史『日本占領と宗教改革』(学術出版会、2012年)
・奈良静馬『西班牙古文書を通じて見たる日本と比律賓』(大日本雄弁会講談社、1942年)
・西鋭夫『國破れてマッカーサー』(中央公論社、1998年)
・加藤陽子「平沼騏一郎関係文書についてのスコープ」(フーヴァー研究所閲覧用目録)
・加藤陽子「荒木貞夫関係文書についてのスコープ」(フーヴァー研究所閲覧用目録)
・Nobutaka Ike. 1958. The Hoover Institution Collection on Japan, Hoover Institution Press.
・Peter Duignan. ed. 1985. The Library of the Hoover Institution on War, Revolution and Peace, Hoover Institution Press.
・"SCAP Officials make Detailed Reports on Food Situation for Hoover Mission," May 6 1946, The United States, President's Famine Emergency Committee Records, 1946-1947, Box 28-4, Hoover Institution Archives, Stanford University, CA, USA
・Shizuma Nara. 1922. The Relations between Japan and the Philippines. MA Thesis, Stanford University.
・Yoshio Higashiuchi. 1951. Literature on Contemporary Japan: Based on Materials Collected by the Tokyo Office, The Hoover Institute and Library on War, Revolution and Peace. Tokyo Office: Hoover Institute and Library.
・Japanese Modern History Manuscript Collection, Hoover Institution Archives, Stanford University.

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