アンジェリカ図書館
From:岡崎 匡史
世界の図書館④
ローマ帝国の勃興と衰退を色濃く残すイタリアの首都ローマ。
多くの観光客が行列をなして訪れるローマ神を奉るパルテオンの近くにアンジェリカ図書館(Biblioteca Angelica)は人目を避けるようにある。
ダン・ブラウンのサスペンス小説『天使と悪魔』(Angels & Demons)が映画化された際に撮影現場としても使われた場所だ。
日本の観光ガイドブックには記載もなく、意識しないと気がつかずアンジェリカ図書館を通りすぎてしまう。
修道士アンジェロ・ロッカ
イタリアでは12世紀に起源がある世界最古のボローニャ大学が有名だが、図書館は大学だけのものではない。
アンジェリカ図書館は、自治体が運営しているカトリック系の公立図書館である。
創立者は聖アウグスチノ修道士のアンジェロ・ロッカ(Angelo Rocca・1545〜1620)。ロッカは、シクストゥス5世(第227代ローマ教皇・1521〜1590)のもとでラテン語聖書の作成。そのかたわらで、本の蒐集家でもあった。
彼の蔵書2万冊を修道内に寄贈する形で、1604年にアンジェリカ図書館が設立された。いうまでもなく、図書館の名称はロッカの名前に由来している。
修道院・図書館・都市
アンジェリカ図書館は街に溶け込んでいて、それが図書館だと気がつかない。内部に入っていくと四方の壁の書棚が20万冊の本で埋めつくされていることに圧倒される。
15世紀から18世紀にかけてのイタリア文学をはじめとして、世界地図や宗教改革の書籍が多言語に渡って収められている。
とくに、哲学者キケロ(BC106〜BC43)の『弁論家について』、アウグスティヌス(354〜430)の『神の国』などの初版本を所有している。
アンジェリカ図書館は、修道院・図書館・都市が密接な関わりをもちながら、歴史を刻んできたことが実感できる。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・Marco Delogu e Massimo Listri. 2015. La Biblioteca Dorta. Roma: Edizioni Sbinae